前走車の急ブレーキや、歩行者の飛び出しなどの緊急時に効果を発揮する自動運転レベル1相当の技術である自動ブレーキ 。衝突被害軽減ブレーキ認定制度によって一定以上の性能が担保されているものの、メーカーによって性能が異なります。各メーカーによる自動ブレーキの特徴や性能の違いなどについて解説します。

自動ブレーキとは?

©toa555
/stock.adobe.com

自動ブレーキとは、車や障害物に対する衝突時の被害を軽減するために警告やブレーキアシストを行い減速を促す装置です。勝手にブレーキをかけてくれる車やシステムであると誤解されがちですが、正式名称は「衝突被害軽減ブレーキ」。

衝突が避けられないとシステム上で判断された場合には、自動でブレーキを作動させるものの、あくまで緊急用のものです。

※この記事では「自動ブレーキ」という通称に統一して解説します

(広告の後にも続きます)

自動ブレーキの性能の違い

©chesky/stock.adobe.com

センサーによる性能の違い

自動ブレーキのセンサーとして用いられるのは、カメラ・レーザー・レーダー・ソナーの4種類です。

それぞれのセンサーには得意・不得意があり、検知できる対象や環境が異なります。そのためメーカーは必要に応じて複数のセンサーを組み合わせることで性能を補い、対象の認識精度を高めています。

もちろんメーカーによって使用するセンサーも異なります。各センサーには以下のような特徴があります。

カメラ

カメラは可視光による画像認識で対象物の形状を正確に検知することができます。カメラを2つ搭載するステレオカメラやデュアルカメラと呼ばれるものは、人間の目のように距離を把握することができます。

赤外線レーザー

不可視の赤外線を用いるレーザーは、短距離の正確な距離計測に適します。複数のレーザーを照射することである程度の形状を把握することもできます。

ミリ波レーダー

レーダーは電波を照射し、広い範囲のおおまかな距離と形状を把握できるセンサーです。天候の影響を受けにくいというメリットもあります。

ソナー

超音波で短距離の障害物を検知するのがソナーです。ソナーは透明なガラスも検知し、おもに緊急停止時やペダル踏み間違い防止装置のセンサーとして使用されます。

検知対象・検知環境の違い

同じセンサーを組み合わせた車だとしても、制御ソフトウェアはメーカーによって異なります。検知可能の対象や環境、対応する速度域や作動タイミングなどの性能にも違いがあります。

明るい昼間は車と人を識別・検知しやすいためどのメーカーでも安定して作動します。しかし、光源が少ない夜間は作動が不安定になりがちで、メーカーによる性能の違いが出やすくなります。

また、フロントガラスやセンサー部の汚れや曇りに加え、大雨・雪・霧・暗闇・逆光などの悪天候時にも性能の違いが出やすく、場合によっては誤作動の恐れもあります。

自動ブレーキは誤作動しないの?誤作動の割合と事故率まとめ

サポカーとサポカーSの違い

自動ブレーキを搭載した車は「サポカー」と呼ばれます。それに対し「サポカーS」とは、自動ブレーキ機能に加えて、誤発進抑制装置や車線逸脱警告機能などを追加した車のことを指します。つまりサポカーとサポカーSの間で自動ブレーキの性能自体に違いはありません。

サポカーとは?サポカーSとの違いやトヨタ・マツダ・スバルなど全35車と減税

誤発進抑制機能との違い

誤発進抑制装置とは、いわゆるペダルの踏み間違い事故防止のための装置であり、障害物に衝突する危険がある場合に停止状態から発進できなくするものです。おもにエンジン側を制御するため、自動ブレーキの仕組みとは異なります。

メーカー・車種・グレード・年式による違い

自動ブレーキの性能は、政府が定める衝突被害軽減ブレーキ認定制度によって一定の安全基準以上に保たれています。しかしその性能はメーカーや車種、グレードによって異なります。

使用しているセンサーや制御によって作動速度帯や検知対象、警告タイミングやブレーキ作動条件などの細部が異なります。また、自動ブレーキシステムの改善により、同じ車種でも年式やマイナーチェンジ前後で自動ブレーキの性能が異なる場合があります。

乗員人数・タイヤ・路面状態による違い

自動ブレーキの作動条件が同じだとしても、停止するまでの距離は、車の乗員人数・ブレーキ性能・タイヤの銘柄や状態・路面状態などによって変動します。

自動ブレーキは、あくまで一定条件下でブレーキを決められたプロセスどおりに自動制御されるだけでのものであり、車の状態によっては安全に停止できない場合があります。