マツダ新型「ロータリースポーツカー」実現へ! そもそも「ロータリーエンジン」何が凄い? 意外と知らない「一般的なエンジン」との違いとは

マツダの魂として語られることの多い「ロータリーエンジン」ですが、そもそも一般的なレシプロエンジンとは一体何が違い、どのような魅力あるのでしょうか。構造や歴史を紐解いて解説します。

「おにぎり」が回転してエネルギーが生まれる?

 ロータリーエンジンを搭載した個性的なモデルを登場させてきたマツダは、新しい時代に適合したロータリーエンジン(RE)の研究開発を加速させることを明らかにし、ロータリーエンジンの新しい物語の序章として、2024年2月1日付でパワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部に「RE開発グループ」を復活させました。

 カーボンニュートラル社会の実現に向けて、時代に適したソリューションによってクルマが持つ楽しさを届け続けるために、新生のRE開発グループでは、ロータリーエンジンを発電機用として継続的に進化させ、主要市場での規制対応やカーボンニュートラル燃料対応などの研究開発に取り組むといいます。

 また、2023年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2023(以下、JMS2023)」では、マツダは「ロータリーエンジン」を搭載したスポーツカーのコンセプトモデル「ICONIC SP(以下、アイコニックSP)」を世界初公開しました。
 
 同車の特徴は何と言っても、ロータリーエンジンという珍しいエンジンを採用している点に尽きますが、そもそも一般的なガソリンエンジン(レシプロエンジン)とは一体何がどう違うのでしょうか。

 一般的なレシプロエンジンは、ガソリンを爆発させた力でピストンを動かし、動力を生み出します。

 一方でロータリーエンジンは、回転子と呼ばれる「ローター」を回転させることで動力を発生させるエンジン。

 レシプロエンジンは往復動機構、ロータリーエンジンは回転動機構と、そもそもの構造や仕組みが全く異なるのです。

 ロータリーエンジンの研究は古くから行われてきましたが、その多くは実用化に至りませんでした。

 その中で、唯一開発に成功したのが、ドイツ人研究者のフェリクス・バンケルが生み出した「バンケル・ロータリーエンジン」です。

 バンケル・ロータリーエンジンは、ローターが「おにぎり」のような三角形をしているのが特徴で、このローターとハウジング(ローターが稼働する空間のこと)の「すき間」に混合器を入れ、爆発させることで圧力が生じ、この圧力でローターを回転させる仕組みです。

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ロータリーエンジンの問題をマツダが解決した

 このロータリーエンジンの特徴は、構造がシンプルでありながらも、小型で軽量。しかも高い出力が得られるという点に加え、静粛性の高さもロータリーエンジンならではのメリットです。

 この特徴は、クルマに搭載するエンジンとして非常に魅力的なものであったことから、多くの自動車メーカーが注目しました。しかし、実用化はされなかったのです。

 実用に向けての大きな障害となったのが「チャターマーク」と呼ばれる、ハウジング内の異常な摩耗です。

 ロータリーエンジンのローターには、気密保持をするために三角の頂点部分に「アペックスシール」を取り付けます。

 しかし、ローターを回転させると、このアペックスシールがハウジング内を削ってしまうというトラブルが発生。多くのメーカーはこの問題を解決できなかったのです。

 そんな中、世界で唯一この問題の解決に成功したのが日本のマツダ(旧:東洋工業)です。

 1960年代初頭にバンケル式のロータリーエンジンに注目したマツダは、アペックスシールの形状を工夫したり材質を変えたりと試行錯誤を繰り返すことで、世界初となる「2ローターロータリーエンジン」の量産に成功します。

 そして1967年には、国産で初の2ローターロータリーエンジン搭載車「コスモスポーツ」が登場。

 ここからマツダの魂ともいえる「ロータリーエンジンの歴史」がスタートします。