人身事故とは?

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相手を死傷させたら人身事故

道路交通法の第67条2項において、「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」が交通事故とされています。また、警察庁の「交通事故統計における用語の解説」では次のように説明されています。

「交通事故」とは、道路交通法第2条第1項第1号に規定する道路において、車両等及び列車の交通によって起こされた事故で、人の死亡又は負傷を伴うもの(人身事故)並びに物損事故をいう。

警察庁「交通事故統計における用語の解説」

つまり人間が死亡・負傷した交通事故が人身事故に該当すると考えるのが正しいです。

物を壊したが人の死傷はなかったら物損事故や自損事故

人身事故以外に、物損事故と自損事故と呼ばれるものがあります。人間の死傷はなかったが、何か物を壊してしまった交通事故が物損事故です。例えば、ガードレールや信号機を破壊してしまった、駐車場に停められている他の車にぶつけてしまったなどが挙げられます。

自損事故は、車両が1台単体で引き起こした事故であることを示しています。自宅駐車場で倉庫に車をぶつけた、居眠り運転で電柱に衝突したなどがその例です。

自損事故によって死亡・負傷した場合も人身事故と考えることができます。事故に巻き込まれた人数の数や車両台数は関係ないのです。

物損事故の例 ガードレールへの衝突事故についてはこちら

【要注意】ガードレールに事故でぶつけたら弁償しないといけない?点数や報告義務について

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人身事故によって科される3つの責任:刑事・民事・行政処分

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事故の程度によって違いはありますが、人身事故が起きた時点で刑事処分・民事処分・行政処分を科される可能性が生まれます。それぞれの処分がどういうものかをみていきましょう。

罰金や懲役の「刑事処分」

刑事処分とは、道路交通法や自動車運転処罰法などの法律を犯したことで科される、罰金や懲役などの処分です。刑事処分の例として、自動車運転死傷処罰法の第5条「過失運転致死傷罪」が挙げられます。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 第5条より

免許停止や免許取消の「行政処分」

運転免許における行政処分とは、道路交通法ならびに道路交通法施行令に則って各都道府県の公安委員会が執行する運転免許の停止・取消などを示します。

人身事故が発生した場合、安全運転義務違反の2点、並びに2~20点以上の付加点数が累計されます。付加点数は事故の種別(死亡、あるいは診断書に記載された全治日数)によって決定されますが、人身事故となった時点で少なくとも4点以上累計されるのは確実です。

点数制度では累積で6点以上に達した時点で免許停止あるいは免許取消です。つまり、人身事故を起こした時点で交通違反による累積が1点以上あれば、免許停止となります。

被害者への賠償責任となる「民事処分」

加害者は人身事故の被害者へ損害賠償を支払う義務が発生します。これが民事処分です。通院による治療代や破損した車両の修理代、怪我・後遺症によって働けず失われた収入の補償などが該当します。

【豆知識】無事故無違反の対象は?

ゴールド免許となる条件にある「無事故無違反」のうち、「無事故」とは人身事故のみのことを示します。単独事故、対物事故は免許においては事故扱いになりません。

人身事故を法律的に説明すると「行政処分上の事故」。つまり人身事故のみが行政処分上、事故として扱われることになります。詳しくは以下記事で解説しています。

ゴールド免許は事故しても継続できる?継続可能なケースと条件を解説