本記事は、安達 信氏の書籍『氷上の蠟燭』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
第一章 イマジン
瑠璃は二人の話が聞こえない振りをして、
「なんか二人で、楽しそうにどうしたの……。晩ご飯の用意できたから、食べましょう」と誘った。
食卓には、かき揚げ、天麩羅に加え、かまぼこ、バイ貝の煮つけ、イカの黒作り、ホタルイカの沖漬けが並んでいた。
「まあ、昨晩、今晩とご馳走ね。私の好きなものばかりじゃない。一体全体どうしたの、瑠璃……?」
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「瑠璃、悪いが日本酒あるかい」
「珍しいわね。いつもウイスキーばかりなのに、どうしたの? 以前あなたの友達からいただいた〝別山〟があるんだけど、随分前のものよ」
と言って瑠璃は床下収納庫から取り出しもってきた。
真一は華音に、
「悪いが、おちょこを四つ用意してくれないか」と頼んだ。
「四つ?」