top_line

「エンタメウィーク」サービス終了のお知らせ

『スター・ウォーズ』インスパイアな中世ビジュアル!? A24『グリーン・ナイト』監督が明かす“オタク的”製作エピソード

BANGER!!!

ちなみにロウリー監督の妻であるオーガスティン・フリッゼルは俳優で監督、プロデューサー(初の長編監督作『Never Goin’ Back / ネバー・ゴーイン・バック』が2022年12月16日に日本公開)。今回の『グリーン・ナイト』では冒頭のナレーションで、彼と妻の声がミックスされた音源が使われていたりする。そしてこの『グリーン・ナイト』は、やはりビジュアルのアピール力が半端じゃない。舞台は一応、中世なのだが、どこか時空を超えた幻想的な美しさ、不気味さが全編に漂い、プロダクションデザインの最高の仕事を実感させてくれる。

歴史的に正確な美術を求めたわけではなく、SFやファンタジーのジャンルを意識しました。一応、舞台はイギリスですが、あえてイギリスの文化や建築からは離れて、『スター・ウォーズ』の世界からインスパイアされたと言ってもいいでしょう。これまでの映画で観たことのない中世のビジュアルを模索した感じですね。とにかくこの映画では、あらゆる点で、ひとつの時代、ひとつのスタイルに収まらない絵を作り出したかったのです。

「一時は撮影中に“確実に死ぬ”と感じたりもした」

人間の言葉を話すキツネや、荒野に吊るされたガイコツなど、ガウェインが道中で遭遇する奇々怪々な物たちの中で、ひときわインパクトを放つのが、彷徨う巨人だ。その映像には明らかにロウリー監督のこだわりが見て取れる。

私は巨人が大好きなんです。そびえ立つキャラクターに本能的に惹かれます。ですから脚本に登場させたのですが、そこに私のジェンダーについての意識も込めようと決めました。そもそもアーサー王の伝説は男らしさを強調しており、今の時代では批判もされるでしょう。本作の巨人は、過去の価値観に囚われた世界を置き去りにして、遠くへ旅立つ存在にしました。それでちょっと女性的な外見なんです。おそらく巨人には服も髪の毛も必要ないと考え、あのようなデザインに行き着きました。私の坊主頭もヒントにして(笑)。

彼らがどこへ向かい、どう子孫を残すのか、想像を巡らせる意味で、巨人のシーンには私の思いが凝縮されています。視覚的な美しさはもちろん、本作のテーマも伝えていますから。いつか巨人を中心に、本作の新たなチャプターとして映画を撮ってみたいですね。

気温の低いアイルランドの荒野でのロケなど、過酷を極める撮影だったことをデヴィッド・ロウリー監督は吐露する。

最悪の体調でした。最初はひどいインフルエンザにかかり、一度は回復したものの、再び感染し、体内に膿瘍ができて手術が必要とされる状態でした。それでも撮影を続け、一時は確実に“死ぬ”と感じたりもしたのです。とにかく生き残ることだけを考えながら映画を撮ったプロセスは、過酷で残酷な運命をたどったガウェインに似ていたかもしれません。

監督の壮絶な体験を想像しながら観れば、『グリーン・ナイト』の世界にますますどっぷりと没入できるかもしれない。

文:斉藤博昭

広告の後にも続きます

『グリーン・ナイト』は2022年11月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

  • 1
  • 2

2022年11月24日

提供元: BANGER!!!

 
   

ランキング(エンタメ)

ジャンル