『BLACK』の衝撃
『仮面ライダーBLACK』。現在アラフォーあたりの世代にとっては、リアルタイムで触れた初めての仮面ライダーとして特別な思い入れがある人も多いのではないだろうか。1987年~1988年にかけて日曜朝に放映されていたこの番組を、当時未就学児だった自分もドキドキしながら観ていたことをうっすら記憶している。
個人的な話をすれば、その後同じ特撮でも平成ゴジラシリーズやウルトラマンなどの、いわゆる“巨大特撮”に傾倒していったこともあって、ライダーシリーズを熱心に追っていたわけではない。それでも大人になってこの『BLACK』を改めて観返したとき、かなり度肝を抜かれた。陰影が強調されたソリッドな絵作り。手に汗握るスリリングなカメラワーク。そして、なかなかにハードなストーリーテリング。これが毎週末、さわやかな朝の食卓で流れていたのだから、そりゃ子供心に緊張感ある時間だったろうなあと追想する。
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今でこそニチアサ枠で斬新なヒーロー番組が放映されることは珍しくなくなったが、1987年前後というのは、いわゆる“特撮不毛の時代”。仮面ライダーのTVシリーズも前作『仮面ライダースーパー1』(1980~1981年)から6年にわたる休眠期間があり、スーパー戦隊シリーズを除いては、特撮作品のビッグタイトルがほとんど製作されていなかった。
そこに突然現れた漆黒のライダーのインパクトは、相当なものだっただろう。
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その後、番組のヒットを受けて『仮面ライダーBLACK RX』(1989年)が製作されただけでなく、特撮コンテンツ全体を見渡してみれば『ゴジラVSビオランテ』(1989年)、『ウルトラマンG』(1990年)など往年のビッグコンテンツの新作が相次いで生まれ、結果的に90年代は優れた特撮作品が次々と送り出される時代へと変わった。過去作品の引用や再解釈をふんだんに盛り込んだ、いわゆる“リブート”ものが盛んに製作されるようになったのもこの頃からだ。
『仮面ライダーBLACK』は、その大きな流れの先駆けとなった作品と解釈しても大袈裟でないように思う。
そんな作品が令和の時代に『仮面ライダーBLACK SUN』としてリブートされる。ライダーリテラシーが高いとはいえない自分でさえ、この第一報には胸が躍り、あの幼少期のドキドキを思い出しながら作品の完成を待ったのだった。
『シン』2作のリブートの方向性
ところで、 そもそも“リブートの魅力”っていったい何だろう?
技術革新による映像表現の向上、新世代によって息を吹き込まれ再構築される物語、作品自体の普遍性の再発見……いろいろと挙げられるだろうが、個人的には「その時代なりの色を映し出しながら、改めて作品が紡がれること」に大きな意義を感じる。