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『スター・ウォーズ』インスパイアな中世ビジュアル!? A24『グリーン・ナイト』監督が明かす“オタク的”製作エピソード

BANGER!!!

ここ数年、映画ファンにとって作品チョイスのひとつの条件になっているのが、ある映画会社の名前。それは、A24。

アカデミー賞にも絡む傑作を大量に送り出してきた実績もさることながら、『ヘレディタリー/継承』(2018年)、『ミッドサマー』(2019年)といったインパクト大の作品が日本でもスマッシュヒット。2022年の後半は、そのA24作品が日本でも公開ラッシュになっているなか、同社らしい強烈な味わいを伴って、その世界に没入させてくれるのが、『グリーン・ナイト』だ。

「間違いなく私はオタクです(笑)」

14世紀の叙事詩を基にした冒険ファンタジー。アーサー王の甥、ガウェインが、クリスマスに現れた緑の騎士(=グリーン・ナイト)に首斬りゲームを持ちかけられ、その騎士の首を切り落としたことで、一年後のクリスマスに旅に出ることになる。幻想的で奇怪な世界に引き込まれる一作。

監督はデヴィッド・ロウリー。『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(2017年)はシーツを被った幽霊が妻を見守る不思議なラブストーリー、『さらば愛しきアウトロー』(2018年)はロバート・レッドフォードの俳優引退作としてコミカルな味もある犯罪劇、そして今後は、ジュード・ロウがフック船長を演じる『ピーター・パン&ウェンディ(原題)』が控えるなど、その監督作はジャンルも、テイストもバラエティに富みすぎ! いったい本人は自身の作家性、方向性をどう考えているのか。ロウリー監督は次のように説明する。

たしかに私の監督作は、バラバラなイメージですよね。その点は自分でも認識しています。ただ私自身としては、同じストーリーを多くの角度から繰り返している感覚なんですよ。そうやって別方向に枝分かれした作品が、映画作家としての一貫性を打ち破っているのかもしれません。どうやったら自分の作家性を構築できるのか。じつはつねに私は考え続けているものの、どうも変化を止められないみたいですね(笑)。

では今回の『グリーン・ナイト』は自身のキャリアで、どのように位置付けされるのか。本作はロウリー監督が中世の冒険物語に思いを巡らせていたとき、自宅で大切に保管していた『ウィロー』(1988年)のアクションフィギュアを目にしたことがきっかけで、脚本が書かれ始めたという。なんとなく“オタク”な要素が感じられるロウリー監督だが……。

はい、間違いなく私はオタクです(笑)。子供時代に最も影響を受けた映画監督は、ジョージ・ルーカスとティム・バートン。私の監督作には彼らのテイストを発見できると思いますよ。大人になるにつれ、アート系の作品、海外の映画などにも夢中になりましたが、ハリウッド大作への愛も衰えず、今回の『グリーン・ナイト』で、私はその両者、つまりマニアックな味わいとエンタメとしての面白さを合体させようと試みました。

「『スター・ウォーズ』の世界からインスパイアされたと言ってもいい」

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ロウリー監督は、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』でもA24と組んでおり、その信頼関係から「心から作りたい映画」に挑むことができたようだ。主人公のガウェインは、緑の騎士との約束を果たすため、壮絶な旅に出る。当然のごとくガウェインには、監督自身が投影されているはずだ。

私はつねに主人公に自分を投影しています。それこそが脚本を書く出発点ですね。そして、ある段階で監督として客観的に作品に向き合うわけです。今回、特に私が重なるのは、母と息子の関係かもしれません。私は大人になりたがらない子供でした。今もそんな側面があります(笑)。そんな私を見るに見かね、責任感をもたせ、成長させるよう仕向けたのが母親です。今回、ガウェインと母親の関係を脚本で書いているとき、明らかに私と母を重ねていました。

アーサー王の甥なのに、一人前の騎士になれず、どこか頼りないガウェイン。息子の自堕落な生活を叱咤する母。その関係にはロウリーの思いが強く込められ、演じたデヴ・パテルもガウェインの心の弱さを名演している。キャストでいえばもう一人、オスカー俳優のアリシア・ヴィキャンデルが、ガウェインの恋人エセルと、彼が旅先で立ち寄る謎めいた屋敷の奥方の2役を演じ、映画を観ているこちらの心をざわめかせる。

最初から1人2役とは考えていませんでした。アリシアに会って、できるだけ彼女を長く出演させたいと思ったのです。エセルと奥方は、それぞれの映し鏡のような役どころで、ガウェインにとって必要な女性の両面を表現しています。でもその両面はあくまでもガウェインに向けたもので、脚本の流れを重視しており、そこに私の“女性観”は反映されていません(笑)。

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