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スラムの暴徒vs警察! パリの現実を描くNetflix『アテナ』冒頭11分の驚異的長回し映像に話題沸騰!!

BANGER!!!

話題沸騰! Netflix『アテナ』

Netflixでの配信直後から、そのノンストップのアクションの凄まじさが話題を呼んでいるフランス映画『アテナ』。パリ郊外のスラム地区での暴動を描いた本作は、映画史に残るといっても過言ではない、冒頭11分の長回しがとりわけ注目を浴びている。

暴徒による警察署の襲撃から、彼らがバンで逃走し、自分たちの根城に戻るまで、カメラが縦横無尽に宙を舞い、車とともに疾走する。てっきり最新のドローンを駆使しプログラミングしたものかと思いきや、これが手持ちカメラの原始的なやり方というから驚きだ(カメラをバンのなかから並走するバイクに乗るカメラマンに手渡しでリレーしたりと、ほとんどスタントマンの領域)。詳しくはYouTubeでメイキング映像が観られるので、興味のある方はぜひ観て欲しい。

CGIや編集による小技を嫌うロマン・ガヴラス監督は、冒頭シーンに限らず、全編にわたって生の迫力を出すために、海外から屈指のカメラオペレーターを呼び寄せ、何週間ものリハーサルを重ねて、息を飲む映像を生み出した。しかも全体の80パーセントはIMAXカメラによる撮影だという。

もっとも、ここではむしろこの映画の制作陣と、映画のバックグラウンドについて解説したい。

名匠を父に持つロマン・ガヴラス×『レ・ミゼ』ラジ・リ

そもそもこんな作品を撮りあげたロマン・ガヴラス監督とは何者か。その名前からお気づきの方もいるかもしれないが、ギリシア人の巨匠でフランス在住のコスタ・ガヴラス監督を父に持つサラブレッドである。もともとミュージックビデオ制作から出発し、その過激さで話題になったジャスティスの「Stress」、M.I.A.の「Born Free」や「Bad Girls」等で知られる。

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本作の前にヴァンサン・カッセル主演の『Our Day Will Come(Notre jour viendra)』(2010年)と、イザベル・アジャーニの『ワールド・イズ・ユアーズ』(2018年)という、2本の長編を撮っている。ともに悲劇的で荒々しさをそなえる。現在41歳の彼は間違いなく、今後フランス映画を牽引するひとりと言える。

そんな彼の長年来の友人が、本作の共同脚本家でプロデューサーのひとりでもあるラジ・リ監督だ。彼はカンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した『レ・ミゼラブル』でやはりパリ郊外の暴動を描いているが、その作風はよりリアリスティックである。

一方ロマンは、彼の言葉によればギリシア悲劇のような壮大さに惹かれ、本作では兄弟を分かつ運命の過酷さを表現したかったという。“ATHENA”という題名は、舞台となるスラム地区の名前だが、ギリシアのアテネ(古代ギリシア語で“アテーナイ”)を連想させずにはおかない。

物語はアルジェリア移民の14歳の少年が、警察官のユニフォームを着た男たちに殺されたところから始まる。真相追及を約束する当局の演説が行われるさなか、少年の兄で三男にあたるカリム率いる暴徒が、復讐のために警察を襲う。その晩、すぐに警官隊がスラム街に突入するが、カリムたちは火炎瓶で応酬し、街はカオスと化す。

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