カルバラーの戦いに破れた二人の廟

スンニに破れたアリーシーアの殉教王子フサインと、異母兄弟のアッバスは、ここカルバラー中心地にある大きな2つの寺院にそれぞれ埋葬されました。ここはシーアにとっての聖地となり、年間数百万~数千万人が巡礼に訪れます。

フサイン寺院

こちらが次男フサインの廟ある寺院です。建物が勇ましく感じられます。

上述の通り、毎年カルバラーの聖地には世界中から数百万人、多いと一千万人を優に超える巡礼者が訪れます。年々増加する巡礼者を収容するため、幾度もの拡張工事を行い、最後の工事はほんの数年前に終えたばかり。お布施も高額で貴重品や宝石も納められるそう。

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イマーム・フサイン寺院

アッバス寺院

外壁の美しいこちらはアッバス寺院です。

砂漠の暑さを潤すようなブルーの装飾。これほど広い壁の細かなところまで、よくぞ完璧に装飾していると筆者も感心しました。聖地は少しでも欠けたらすぐに修復されます。

早速、中へ入ってみます。靴とカメラを預け、持ち物とボディチェックののち中へ入ります。寺院はいずれも、女性と男性の入口は別で内部も男女は分かれています。

少しずつ幅と形を変えた上部壁も、手前から眺めたときの壁をグラデーションしています。日本の神社に通じるところがありますね。

2つの寺院は外装こそ違えど、内装は度肝を抜かれる壮麗さです。

信仰心強く、美意識高く、少数派で結束強いことも相まって、細部に至るまで妥協はありません。

信者は椅子に座ってコーランを熟読されています。

靴下履いてても伝わる滑らかで弾力のある高級シルクのペルシャ絨毯。隙間なく敷き詰められています。内部は神聖な雰囲気です。デザインの大部分は、ペルシャと中央アジアの建築家によって設計されたそう。

天窓ドームから差し込む太陽光は、まるで天の思し召しのよう。  

寺院は二重構造になっていて、中へ入ると中央に壁で囲まれた第2の部屋があります。そこにアッバスの廟があります。一重目に増して豪華絢爛で麗しい。

アッバス棺は黄金に輝いて存在感を示しています。この周りには歩く隙間もないほど女性が座り込み、コーランを音読しています。彼らが殉死したのは1,300年以上前。遠い過去に亡くなった人、言わば歴史的な人物ですが、シーアのムスリムを守るために殉死した彼らの廟とあって、棺の外側を囲う格子にすがってさめざめと泣いている女性も一人や二人ではありません。

サウジのメッカや、イランのマシュドと同様に、ここカルバラーもシーアのムスリムが一生に一度は巡礼する聖地。これだけ信仰心の厚い人々が集まると、その場にいるだけで何か身体が軽くなるような気がします。やはり純粋な信仰心の集まる聖地は、気の張り方もちょっと違うものがあります。軽い病気などは簡単に治るのでは?という、何か森林や滝壺の近くでマイナスイオンを存分に浴びて包まれているような気分です。

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アッバス寺院

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イマーム・フサインの追悼祭「アーシュラー」「アルバイーン」

フサインとアッバスの命日に「アーシュラー」、その40日後には「アルバイーン」と呼ばれる追悼祭が行われます。世界最大の年間巡礼の一つで、シーアのムスリムにとって、とても重要な日です。

こちらは2023年のアルバイーンの様子です。コロナ禍前の2019年には世界中からおよそ2,500万人が巡礼のためカルバラーを訪れたそうです。2023年は自粛明けということもあり、更に多くの巡礼者が訪れました。

カルバラーからもう一つの聖地ナジャフまでのおよそ80Kmの道のりを歩きます。丸一日かかりますが、沿道には出店も連なり聖地巡礼する人々を激励していますよ。

カルバラーのおすすめホテル

カルバラーへ行かれる方におすすめのホテルは、「Baron Hotel」です。

フサインの寺院ある中心地から離れていますが、毎時フリーシャトルが寺院へ向けて出発しますので、これを使うと大変に便利です。この街には珍しい、外資系ホテル並み設備の充実したホテルです。レストランも各国料理が並んでいます。

The Baron Hotel Karbara

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The Baron Hotel

カルバラーの行き方

首都バグダッドから行く場合、ここで書いたように、アラウィ・サウス・ガレッジから向かいます。乗車時間は一時間前後です。

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カルバラー