■旅の思いつきは「会津大仏」への再訪


木造阿弥陀如来及び両脇侍坐像/通称:会津大仏

今から7年前の2015年、雑誌『男の隠れ家』の編集者だった筆者は、「仏像を巡る旅」特集で会津地方を取材した。会津は東北きっての仏都として知られ、鎌倉時代から今に至るまで衆生済度(しゅじょうさいど)を願う人々の拠り所となっている地だ。

いくつもの古刹を巡り、様々な仏様を拝観したが中でも特に印象に残っているのが、願成寺の御本尊「木造阿弥陀如来及び両脇侍坐像」、通称・会津大仏である。

像高2m41cmの阿弥陀如来像は千体仏をつけた舟形光背が金色に輝く立派な佇まい。久しぶりにその神々しい姿を拝見したくなったのである。


千体の仏様が背後に。

第65代住職の秋山高範さんに伴われ大佛堂へ。手を合わせ心の中で南無阿弥陀仏を唱える。雪深い山里で人々とともに存在し、生活を見守り続けてきた仏の顔の、なんと柔和なことか。再訪できた喜びと感謝を静かに念じた。

前回の取材時は先代の住職・諦譽俊良さんに様々な話を伺ったが、代替わりで住職となった秋山さんにも新たなお話を伺う。一般には公開していない本堂へも案内いただき、平家の落人たちがこの地に逃げ延び、弔いのためにひっそりと描かれた欄間絵や、貴重な仏像群を見学させていただいた。

願成寺
福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山833
https://aizudaibutsu.com/

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■心穏やかに祈った後は、お待ちかねの喜多方ラーメン、1軒目!

●食堂いとう「炒めそば」750円

願成寺から車で10分、ちょっと変わった喜多方ラーメンが食せると聞いて訪れたのは、昭和32年創業の老舗「食堂いとう」。朝10時30分から開店しているということで、開店直後に入店する。

店内はこじんまりとした昔ながらの食堂といった風情で、懐かしさと温かさを感じる。店を切り盛りする伊藤さんにご挨拶し、名物の「炒めそば」を早速注文。ほどなくして供された炒めそばは、これまで抱いてきた喜多方ラーメンのイメージを覆す姿だ。

長年、麺やソースの味を変えずに守り続けてきた地元住民に人気の一杯である。ほかほかと立ち上る湯気と香ばしいソースの香りに、思わず生唾を飲み込む。撮影もそこそこに一口すすれば、甘しょっぱくて胃袋を刺激する期待通りの味。


「炒めそば」750円

しかし、普通の焼きそばとは似て非なるもの。もちもちとした太ちぢれ麺の食感とキャベツや豚肉の歯応え。秘伝のソースとラーメンスープでしっかり煮込まれたその味わいは、唯一無二の旨さだ。サービスの自家製漬物とスープも、また美味い!

ライスとスープ、漬物が付いた「炒めそば定食」(850円)は、特に男性に人気なのだとか。確かに炒めそばをおかずに白飯、食える! B級グルメ的な口コミも見かけるが、食堂いとうの炒めそばは“母の味”である。

喜多方市民の胃袋をしっかり掴むソウルフードなのだ。子供の頃から家族と通い、大人になっても定期的に食べに来る客が多いとのこと。

てきぱきと働き、明るく朗らかな“お母さん”伊藤さんと話していると、こちらまで元気をもらえる。「ちゃんとお腹いっぱいになったかい?」そんな言葉がなんだか嬉しい。

1軒目からとても美味しいラーメンと人情に出会えて、幸先の良い旅の始まりとなったのであった。

食堂いとう
福島県喜多方市1丁目4625
http://www.ramenkai.com/list/detail.php?i=9