減衰力は実際の運転にどう影響する?

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上記で説明した理論が実際の運転では、いわゆる「柔らかい足」や「硬い足」に影響します。本来はバネレートが高くなると硬い足になるのですが、減衰力が変化することでも足回りは硬く / 柔らかくなったかのように感じます。

「足を硬くしたければ(ロール量を増やしたければ)減衰力を高くすればよいのでは」と考えることもできます。しかし先ほど述べた通りロール量を決めるのは基本スプリングです。

減衰力が強くなると硬い足のような感覚

一般的に減衰力が強くなると乗り心地がゴツゴツするようになります。段差を走った時にサスペンションが縮むというより、跳ねているかのような感覚です。

同時に、ステアリングを動かした(回した)時の反応が敏感になります。

減衰力が弱くなると柔らかいような感覚

反対に減衰力が弱くなるとふわふわした乗り心地になります。全体的に緩い動きとなる印象です。

そもそも純正サスペンションってどんな味付けなの?

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街中から高速道路までの一般道(公道)、ちょっとした未舗装の道、スポーツ走行を楽しむためのサーキットなど、どこを走ってもそこそこ走れるようになっているのが純正サスペンションです。

ロール量、ロールスピード、サスペンションのストローク量にいたるまで、とてもバランス良く仕上げられています。各自動車メーカーの莫大な時間・費用・データなどによって導き出された最適解とも言えるでしょう。

しかし、サーキット走行で少しでも速いタイムを出したい、ワインディングでさらに気持ちよく走りたいといった特別な事情を達成するためには、一部車種では物足りなさを感じることがあります。

その不満を満たすのが車高調やバネレートの高いスプリングであり、同様にショックアブソーバーの減衰力も重要となるわけです。

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初心者はここまで理解すればOK。次の見出しからは少し上級者向けのマニアックな解説です。

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速いピストンスピードと遅いピストンスピード

前半部にてショックアブソーバーの構成部品の1つにピストンがあると説明しました。ピストンが動く速度の違いは、発生する減衰力の大きさに影響します。

ピストンスピードが速くなるにつれ、より大きな減衰力が発生する特徴です。実際、コーナーリング時にロールしてもサスペンション経由で衝撃は伝わりませんんが、段差を越す時には強い衝撃が車内へ伝わってきます。

上記の事例からわかるように、コーナーリング時(ロール時)のピストンスピードは遅く、反対に路面の凹凸にタイヤが乗った時(ピッチング時)のピストンスピードが速い、というのが基本です。

先ほど紹介した単位で表すと、遅いピストンスピードは0.1m/secで、速いのは0.3m/sec。つまり、1秒あたり20cmの差で速い・遅いが決まること、そして0.2m/secはそれらの中間に位置して「目安」となり得ることがわかります。

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