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NARASAKI×小倉ヲージが語る、共同プロデュース新アイドルの旗揚げ「残虐な音が揺れているのに、歌ってる子たちはお構いなしでかわいい」

Pop’n’Roll

COALTAR OF THE DEEPERS、特撮などのバンド活動のみならず、ももいろクローバーZやBABYMETALなどのアイドルにも楽曲提供をしているNARASAKIと、代代代、細胞彼女などのプロデューサーを務めた小倉ヲージが共同プロデュースする新アイドルグループの始動が発表された。

常に音楽シーンの中で、唯一無二の刺激的なサウンドを轟かせ続けている両者がタッグを組んだ新グループは、一体どのようなものになるのか?

NARASAKIと小倉ヲージに、今回のプロジェクトのいきさつからグループのビジョンについて、じっくり話を訊いた。

【画像はこちら】

NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS、特撮)×小倉ヲージ(代代代、細胞彼女他プロデューサー)が共同プロデュースする、新アイドルグループがついに動き出す——。

これは代代代が所属していたレーベル『DEMON TAPES』が昨年2023年夏にオーディションを開始していたものだ。先日、Xのオフィシャルアカウント(DEMON TAPES NEW GROUP)が開設されたが、メンバーはおろかグループ名すらもまだ明かされていない。“2024年6月29日土曜日 午後6時 渋谷”という日程がポストされたのみで、その全貌は謎のベールに包まれている。

音楽シーンにおける奇才2人がアイドルシーンで何をやろうと企んでいるのか。グループ名など、まだ明かすことのできないことも多いというが、両名が手を組んでアイドルプロデュースを行なうことになった経緯、そして気になるその音楽性について、詳しく話を訊いた。

“Dビートと2ビート、ブラストを多用するアイドルができないか?”っていうことだったんです(小倉)

——まずはおふたりの出会いからお訊かせください。

小倉:
もう僕はNARASAKIさんヲタクなので(笑)。NARASAKIさんが関わった、クレジットされているCDはすべて買ってきたつもりです。ずっと“好きだ、好きだ”と言い続けていたら、お会いすることができて。夢は口に出すことが重要なんだと気づきましたね。初めてお会いしたのは、細胞彼女っていう以前僕がやっていたプロジェクトの頃なので、8〜9年くらい前ですね。

NARASAKI:
友達から“なんか面白いアイドルがいる”と教えてもらって、音源聴いたらすげぇいいなって。それでライブに行ったんですよ。

小倉:
あの頃、僕は現場にいて、普通にチェキとか撮ってたんですけど、“え? NARASAKIさんが来るの⁉︎”って。まぁ、“NARASAKIさん”って呼んでますけど、当時は“NACKIE”ですよね。完全にファンでしたから(笑)。そんなNARASAKIさんに、インタビューの中で細胞彼女の名前を出していただいたんですよ。それはもう舞い上がりましたよ。そこから僕が代代代をやっている間は特に交流もなかったんです。そしたら、ある日連絡をいただけて……こういうことになりました。

NARASAKI:
“速い曲をやるアイドル”っていう構想が8年前くらいからあって。ちょっと近未来的でファストコアみたいなものをやりたいなと。だけどアウトプットするところがない。たまにガンダムのキャラソンとか、単体曲としてはやったりしてたんですけど、そういうことをまとめてアイドルでやりたいなと。そう思ってたんだけど、なかなかタイミングもなくてね。それで、ちょうど代代代の最後の音源のお話をいただいた時(「ダンスは済んだ」作詞:小倉ヲージ/作曲:NARASAKI 2023年8月リリース『滅滅滅』収録)ですね。小倉さんにちょっとお願いしてみようかなということで、“どうですか?”と話を持ちかけたわけです。

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——小倉さんは長年手掛けてきた代代代が終わることになって(2023年8月をもって活動終了)。そこから再びアイドルをスタートさせるモチベーションは、やはりNARASAKIさんと一緒にやることだったのですか?

小倉:
お話をいただいた時、正直できるかなという不安があったんです。というのも、代代代でもうアイドル運営というか、プロデュース業は終わりにしようと決めていたんです。でもNARASAKIさんとお話をしていく中で、もう1回自分を奮い立たせることができるかなと思ったんですよ。アイドルを手掛けるのはやめようとしたけど、音楽自体をやめることはないと思ったので、より音楽を極めるためには次のステップに行くしかないんだと。今まではずっと自分のためにしかやってこなかったので、他人と一緒にやる、それこそ尊敬している方と一緒にできる機会なんて、人生に1回あるかないかの話だと思うんです。それで周りの友達にも意見をもらったりもして、最終的にやるべきだという心持ちになりましたね。

——やはり1人でやっていた時とは全然違いますよね。

小倉:
はい、全然違いますね。1人でやっていた時はやっぱり苦しかったので……。自分で全部を出さないといけなかったわけですけど。今はNARASAKIさんの思い描いているものをどうやったら具現化できるか、というところにシフトしてるので。そこに楽しさを見い出してます。

——NARASAKIさんが、アイドル自体をどう見ていたのか気になるところでして。というのも昔の話になりますけど、“アイドル戦国時代”と呼ばれていた時代に、ももいろクローバーZの楽曲制作にNARASAKIさんが関わったことがアイドルにハマるきっかけになった、というロックファンが自分の周りにすごく多かったんですよ。

NARASAKI:
そもそも、ももクロをやるきっかけは『さよなら絶望先生』というアニメに関わって、そこのディレクターから打ち上げの時に、“今度こういうアイドルをやることになったんだけど、ちょっと曲を書いてくれないか?”と言われたんですよ。それで作詞家の只野菜摘と一緒に“じゃあ、やってみよう、協力しますよ”みたいな感じで始めたんですよね。俺的には、アイドルでもこんな面白いことができるんだ、みたいな感じでした。自分は作家としてサブカル担当みたいなポジションだと思ってたんで、それをロックファンに向けてやろうと思ったんです。

小倉:
そんなももクロの「ピンキージョーンズ」(2010年11月リリース)を聴いた我々はものすごく衝撃を受けまして。結果的にアイドル運営をやるっていうアイドルプロデューサーが周りにゴロゴロいたんですよ。「ピンキージョーンズ」に人生狂わされたアイドル運営はかなり多いと思います。僕も含めてなんですけど(笑)。

NARASAKI:
ありがたいことに、そういう話はよく聞きます。「ピンキージョーンズ」で会社を辞めてアイドルプロデュースを始めたとか。

ももいろクローバー「ピンキージョーンズ」(2010年)
作詞:村野直球 / 作曲・編曲:NARASAKI

——そうやってアイドルで女性ボーカルのポップス&ロックの可能性を切り拓いたNARASAKIさんが、今また新たなアイドルを生み出そうとしている。

NARASAKI:
速い曲だったら、ももクロでもあるんです。でも、やっぱり1回速い曲を聴いちゃうと次の曲が遅く聴こえるみたいなことがあって。だからそっちに特化したものでいきたいなって。

小倉:
最初にお話をもらった時、“Dビートと2ビート、ブラストビートを多用するアイドルができないか?”っていうことだったんです。自分もそういった速い曲やむちゃくちゃな曲が大好きなんですよ。それが好きになった理由はNARASAKIさんの音楽や、NARASAKIさんが影響を受けた音楽を探っていったんです。なので、その源流の方と一緒にできるんだという喜びがあったし。初めてお会いした時も、“Dビートって、いいよね”みたいなお話をしていただけて。“NARASAKIさん、ももクロとかにポップないい曲を作ってるけど、やっぱりDビートの人なんだ!”って、ちょっとそれで嬉しくなっちゃいまして。“僕のDビート好きは間違ってなかったんだ!”みたいな(笑)。だから代代代にはそういう曲は意外となかったかもしれないですけど、原点に戻って、それができるかなと思いました。

小倉ヲージ

普通だったらどこも拾ってくれないことをアイドルで堂々とできる(NARASAKI)

——おふたりに共通しているのが、楽曲の方向性やサウンドはマニアライクであったとしても、そこに乗るメロディラインが綺麗でキャッチーというところがありますよね。きっちり“歌モノ”に落とし込んでいる。

NARASAKI:
それが1番得意というか。すごく残虐なところにギャップのあるものを乗っけるのが誰よりも得意だと思うんですよ。そのバランスをウマくやるのが好きなんです。基本的にはCOALTAR OF THE DEEPERS(以下、DEEPERS)もそうですし、もうずっとそればっかりやってますね。

小倉:
DEEPERSも音は残虐だけど、NARASAKIさんの声が優しいから。

NARASAKI:
よく、歌に入ってズッコケるみたいなことを言われるんだけど“そうだよ”って(笑)。グワッ!!っと曲が始まるんだけど、歌に入るとそういうわけでもないというね。それが魅力というか、好きでやってるんですよ。

——個人的な話ですけど、私がDEEPERSを知ったきっかけはhideさんなんです。hideさんが言っていたのがまさにそれでした。歌とサウンドのコントラストの強さ、いい意味での裏切り方とでもいうか。hideさん自身のラジオ番組でワンコーラスではなく、フル尺で曲を流したりもしていましたし。

NARASAKI:
ああ、「Receive Assimilation」(1998年)ですよね。10分以上ある曲なんですけど、フルで流してくれた。hideさんにキャッチコピーをつけていただいたんですよ。“轟音の洪水の中に純朴な少年がいる”っていう。

——そう、まさに歪んだ轟音の中に透き通ったボーカルがいました。

小倉:
hideさんがキャッチコピーつけるってすごい話だなぁ。その頃、僕はまだ小学生くらいですね。

——NARASAKIさんの少年のようなボーカルから生まれるメロディラインを女性ボーカル、少女のようなアイドルボーカルに置き換えていくというわけですね。

NARASAKI:
BABYMETALもそうではあるけど、今回のグループはそれの1番極端なパターンですね。これからそれをアイドルユニットでできるっていうのが嬉しい。普通だったらどこも拾ってくれないことを堂々とできる(笑)。

——アイドルだからこそできる、許されるものって、ありますからね。

小倉:
ありますね。NARASAKIさんが持ってきていただくものがどれも面白すぎて。やっぱり僕の感性にはないものだし。曲もそうですけど、アイデア1つ取ってみても、それをアイドルがやるということが奇抜すぎて(笑)。

NARASAKI:
作詞もBABYMETALの時の人に頼んでることが多いんです。その子がいろいろ提案してくれる。グラインドコアで何をやったら面白くなるか?とか。すごく楽しいですね。

——制作スタイルとしてはNARASAKIさんの楽曲やアイディアを、小倉さんがアイドルとしてのフォーマットに落とし込んでいく形ですか。

小倉:
そうですね。NARASAKIさんはアイドルの運営をされたことがないですけど、僕は今までやってきたので。そのできる/できないをジャッジしていく。どうやったらこれが実現できるかっていうのを考えてプロデュースしています。もらったキーワードで僕も曲を作ったり。めちゃくちゃ楽しい!

——早速デモを聴かせていただきましたが、サウンドは相当ヤバいけど、やはりメロディがキャッチーだから聴きやすいんですよね。マニアックに振り切らないバランスが素晴らしいなと。小倉さんが手掛けてきた細胞彼女や代代代もそうでしたけど、ちゃんとアイドルでやる意味を持たせていましたよね。

小倉:
そこは心掛けていますね。アイドルがアーティストになる瞬間ってあるじゃないですか。アイドルという肩書きを捨てる瞬間……僕、あれはあまりいいイメージを持ってなくて……。

——完全に同意です!

小倉:
ですよね。アイドルだったら、ちゃんとアイドルを貫いてくれって思うんですよ。ちょっと前なんですけど、キョンキョン、小泉今日子さんのライブを観に行く機会があって。未だにアイドルで本当に恋しちゃうくらい、めっちゃ可愛いんですよ。ヲタクはヲタクで、“キョンキョン〜!”って叫ぶのかと思ったら、“小泉ーッ!!”みたいなノリで(笑)。その雰囲気もすごくよかったんですよ。今は子どもを産んでもアイドルとして活動している方もいらっしゃいますし、もう年齢とかも関係なくなってきてるんだなと思います。だからこそアイドルを貫いてほしい。キョンキョンができてるんだったら、もっと若い君たちは絶対そうあるべきだって思います。

NARASAKI:
めちゃくちゃわかるなぁ。前にフェスで森高千里が前から歩いてきて“うわ、綺麗だな”と思ったんですよ。これ全然「私がオバさんになっても」じゃないわって。だからアイドルっていう言葉の意味を考えますよね。

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