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ユ・テオの卓越した表現力とグローバルな感性 『パスト ライブス』からさらなる飛躍へ

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『パスト ライブス/再会』Copyright 2022 ©Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

 第96回アカデミー賞の作品賞と脚本賞は惜しくも逃したが、「映画賞246ノミネート88受賞(3月4日時点)」(※1)と世界中から絶賛を受けている『パスト ライブス/再会』。

参考:『パスト ライブス/再会』幼なじみ2人の視線に胸が締め付けられる 全てが絵になる映像美

 韓国系カナダ人の女性監督セリーヌ・ソンが演出した本作は、韓国ドラマ好きにも非常に馴染みやすい内容だと感じる。

 ヒロインは監督と同じ韓国系カナダ人、男性主人公は韓国人。幼い頃に韓国の小学校で出会い淡い恋をした2人が、ヒロインの移住や、12年後のすれ違いを経て、24年後に再会するまでを描いていく。物語のテーマは、イニョン(韓国語。日本語の“縁”と似たような意味で使われる)。縁や運命、そして初恋は、韓国ドラマで何度も描かれてきた永遠のテーマといっても過言ではない。

 初恋の人を思い続ける男性主人公を演じるのが、韓国ドラマでも活躍するユ・テオであることも、韓ドラ好きの心を捉える理由になるだろう。ユ・テオは2023年、Netflixドラマ『その恋、断固お断りします』でトップスター役を好演しヒットに導いた。このドラマで彼の魅力にハマった人も多いのではないだろうか。

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 『パスト ライブス/再会』では、平凡な36歳の韓国人男性ヘソンを演じたユ・テオ。繊細な感情表現が光っている。特に印象的なのは、24年ぶりに初恋の人ノラ(グレタ・リー)とニューヨークで再会するシーンだ。彼女を待つ間、そわそわする姿は純粋な少年の甘酸っぱい恋愛シーンのようだが、彼女が目の前に現れた途端、眼差しが変わる。ノラを真っすぐ見つめる眼差しには、愛しさと切なさと喜びがあふれている。

 そんなユ・テオは、韓国俳優としては珍しい経歴をもつ。1981年にドイツ・ケルンで生まれた。映画『国際市場で逢いましょう』の主人公と同様に、父親は炭鉱労働者として、母親は看護師として、ドイツに移民したのだという。

 少年時代はドイツでバスケットボール選手を志していたユ・テオだが、怪我で断念。21歳からはニューヨークやロンドンで演技を学び、アメリカやドイツのインディーズ映画や演劇などで演技者としての腕を磨いた。そんな経歴ゆえに、ドイツ語はもちろん英語もネイティブ並みだ。『パスト ライブス/再会』では英語をほとんど話せないという設定になっていて、正直驚いた。

 2006年にはニューヨークで出会った11歳年上の韓国人フォトグラファー、ニッキー・リーと結婚し、2009年に彼女とともに韓国に帰国すると同時に韓国での俳優活動をスタート。Netflixドラマ『保健教師アン・ウニョン』でも英語教師マッケンジー役を演じていたが、帰国後は堪能な英語力と欧米で身に着けた身のこなしを活かし、韓国系外国人役を多く演じてきた。

 『パスト ライブス/再会』のインタビューで、「無表情のときは、落ち着いた大人の印象があるけど、笑ったり表情が変わったりすると、ピュアで若々しく見える」と監督から評価されたと話しているが(※2)、ユ・テオという俳優は、寂し気な雰囲気をまとっていることも大きな魅力といえる。それは少年のようなくしゃっとした笑顔にも漂い、悪役を演じるときにも活きてくる。

 例えば、日本ではあまり知られていないが、韓国でユ・テオの評価が高まった作品に『マネーゲーム』というスタイリッシュな経済ドラマがある。ユ・テオは、本作でアメリカの投資会社の韓国系アメリカ人を演じている。韓国経済を揺るがすクレバーな悪役なのだが、時折寂し気な笑顔を見せ、どこか危うい。悪役なのに、どうしようもなく切ない気持ちにさせるのだ。

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