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『ブルーモーメント』夏帆が見せた医者としての葛藤と矜持 本田翼の死がミステリー要素に

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『ブルーモーメント』©︎フジテレビ

 前回描かれた二重遭難をきっかけに佐竹(音尾琢真)が退いたことで、優吾(水上恒司)がSDMの消防班統括責任者に就任。そして「最高のチームを作る」と宣言した晴原(山下智久)は、医療班の候補者たちの研修初日を迎えることとなる。5月8日に放送された『ブルーモーメント』(フジテレビ系)は第3話。これまでの話が「SDMとは?」「気象班とは?」そして、「晴原とは?」を描くプロローグであったと考えれば、今回からはチームのドラマとして新たに舵を切るストーリーが始まったと捉えられる。

参考:夏帆は独特な“安心感”を持つ俳優だ 『ブルーモーメント』の物語にどう溶け込む?

 SDM医療班の候補者としてやってきた医師のひとり、汐見早霧(夏帆)。周囲から“ゴッドハンド”とも称される天才的な脳外科医であった彼女は、ある出来事がきっかけで怪我をしてメスを握れなくなっていた。それでも医師としての復帰を諦めていない彼女に、晴原は「腰掛けなら迷惑だ」と冷たい言葉を投げかける。そんななか、強風注意報が出ている市街地のエリアで大規模な火災が発生。研修の初日だからと失敗を恐れる医療班の統括責任者・志賀(神保悟志)の制止を振り切り、晴原は出動要請を受け入れるのである。

 原作には登場しない汐見というキャラクター、そのバックグラウンドと目の前の命を救う者としての葛藤と矜持を描き、また同様に原作では描かれていなかったフェーン現象によって拡がっていく火災が題材に選ばれる(これは数年前の糸魚川の大火を想起させる)。しかも4月にしては高い気温に見舞われ、熱中症の症状を訴える避難者が続出するというシチュエーションも、昨今の一筋縄ではいかない気象の状況から鑑みるに、いつ誰の身に起こってもおかしくはない気象災害といえる。それだけに、新たなフェーズに突入する上では相応しいテーマではないだろうか。

 汐見のSDM参加もさることながら、チームの“ゼロ”にならないためにと気象予報士を目指して勉強を始める雲田(出口夏希)の存在であったり、時にぶつかり合いながらも同じ目的のために結束していく晴原と優吾との関係性であったり。こうした晴原にとって“命のバトンをつなげる仲間”が増えていくという工程を、彼らの過去と現在目の前で起こる災害に対峙していく様を絡めながら描くことで、このドラマの前半に必要不可欠な地盤が着実に固められていることがわかる。

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 そうなれば今回の(おそらく今回でほとんどフェードアウトすることになりそうだが)志賀や、かねてから園部(舘ひろし)の前に現れてはSDMに慎重な姿勢を見せる立花(真矢ミキ)の存在など、SDMに関わる政治的な思惑が中盤以降に本格的に展開していくことになるということも容易に予感できる。そして灯(本田翼)の死にまつわるミステリーも、新たなクリフハンガー要素として提示される。すでに第3話にして、このドラマの基本的な形、辿ることになるであろう道筋は見えつつある。

 そうしたドラマ的な部分の比重が大きくなっていくことで、前2回の雪山での一連と比較すると災害シーンにおける劇的なダイナミックは多少抑えられていたようにも見える。それでも今回は雪山ではなく、とても身近な市街地での災害。“風を読む”という晴原の役割を如実に示すように風の姿が確認でき、また消防隊員の放水による“水のカーテン”と火災現場の俯瞰ショットを余すところなく見せることで、描くべき画面はしっかりと描かれていたと判断することができよう。
(文=久保田和馬)

 
   

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