中学時代、対立候補さえいなければ誰でもなれる生徒会執行部だった5人。輝かしい(?)思い出は、文化祭でアイドルのように歌ったことだ。すっかりおやじと呼ばれる年齢になった彼らは、親の介護やリストラなど、厳しい現実にさらされていた。そんなとき、【歌って踊れる四十五歳以上の男性限定! イケてるミドルアイドルコンテスト】の募集を見かけ、皆で一発逆転のチャンスにかける――。※本記事は、椎名雅史氏の小説『リストラおやじ、アイドルになる』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
第一話 ハイティーン・ブギウギ ~青松純平の巻~
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「便利な世の中になったもんだ。これがネットで買えるんだからな。血痕があると暗いところで青白く光るらしいぞ」
血痕? 老女は後頭部を怪我していたはずだ。
「赤星先輩、それ意味あります? 血痕が見つかったとしても、それは被害者のものじゃないんですかね。健太は怪我をしていないわけだし」
「バーカ。それがそもそもおかしいんだよ。バーカ」
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やたらに「バーカ」を連発するので、俺はムカついてきた。
「考えてもみろよ。被害者だけが大怪我をして、自転車に乗っていた人間がかすり傷のひとつもないなんておかしいだろ」
たしかに。健太が無事と聞いたとたん、我が子だけに疑いすらしなかった。盲点である。
俺は確認するように健太に質問した。
「本当に怪我はなかったのか?」
健太はコクリと頷いた。