雲海に浮かぶ異世界「エガミ」の小さな島に暮らす少女・ラムカ。ある日突然、彼女は何者かに追われ崖から転落した。意識が戻ると魚と船が融合した生き物の上に。そして目の前に現れたのは、顔は動物、身体は人間の姿をした動物の記憶を持った「零族」と言われる者たちだった。一方、現実世界「モンド」に住む少年・カイユは、『雲海のエガミ』という不思議な小説を読み進めていくうちに、夢の中での出来事と小説の内容が繋がっていることに気が付くのだった。※本記事は、こた氏の書籍『雲海のエガミ』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
10. MONDO カイユの夢
カイユはドキッとして直ぐに手を引っ込めると、男は顔を隠したまま話し始めた。
「俺の名前はムスク。エガミから来た」
男がそうボソッと言った。カイユはそれを聞いた自分が驚いていなく、不思議に感じた。そしてムスクは呟くように続けた。
「今は、雲海のエガミの小説を書いた作者の家に向かっている」
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カイユは、色々聞きたくて頭の中が混乱した。
「あなたがムスク。じゃーあの時、本を盗んだ猫? 教会にも現れた?」
ムスクはコックリと頷くと、なぜ自分がモンド(この世界)に来たのかを説明し始める。
「色々聞きたい事はあるとは思う。あの少女が鏡に入って分かったと思うが、エガミは実在している。俺は、エガミの太陽の国で零族だったが、猫と人間の両方に姿を変える事が出来る能力を買われ、本をモンドから盗って来るように命じられたんだ。本を持って帰れば解放するってな……」
カイユはムスクが人になっても顔は猫のままだったので、なぜ選ばれたのか疑問に思ったがそれは言わなかった。そしてムスクに聞いた。
「エガミに入ったベルサは、どうなるの? 大丈夫なの?」