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画家・ヒグチユウコが描く不穏で美しい『オーメン:ザ・ファースト』の世界…「自分の中にある善と悪について思いを巡らせながら観てほしい」

MOVIE WALKER PRESS

6月6日午前6時に誕生した“悪魔の子”ダミアンと、彼をとりまく人々が次々と戦慄の死を遂げていく様を描き、全世界を恐怖に包み込んだ “ホラー映画の金字塔”『オーメン』(76)。当時、過激な描写で世界を震撼させた同作の前日譚であり、ダミアン出生の秘密を描いた最新作『オーメン:ザ・ファースト』が4月5日についに公開となった。

イタリア・ローマのとある教会に、奉仕生活を始めるためやってきたアメリカ人修練生のマーガレット(ネル・タイガー・フリー)が出会ったのは、修道院に預けられた少女、カルリータ(ニコール・ソラス)。彼女のまわりでは人智を超えた不自然な連続死がなぜか起こり、その元凶はカルリータにあるとされていた。そんななかマーガレットは、教会の恐るべき陰謀を知ってしまう…。

今回、『オーメン』へとつながる驚愕の事実を描いた本作について、人気画家で『Pearl パール』(23)、『ボーはおそれている』(24)などのポスターアートや、描き下ろしイラストをパッケージに使用したローソンとのコラボ商品などで知られるヒグチユウコが描き下ろしのイラストレーションで作品の世界観を表現!過去の「オーメン」シリーズや最新作『オーメン:ザ・ファースト』への想いもたっぷり語ってもらった。

■「『オーメン』への敬意を強く感じる作品になっている」

まず、『オーメン:ザ・ファースト』を試写で鑑賞しての感想を尋ねると「(76年の)『オーメン』への敬意を強く感じる作品になっているなと思いました。私も含め、『オーメン』はファンがたくさんいる作品ですが、本作は“オーメンらしさ”をすごく押さえていると思います!」と本作が『オーメン』へと続く前日譚として、申し分ない作品に仕上がっていることに感心した様子。劇中、悪魔の子の誕生を阻もうとする者たちに凄惨な死が訪れるのだが、「その死に方一つとっても、ファンが『あー!』と喜ぶようなものがちりばめられていたと思う」とシリーズのファンであれば唸るシーンが満載であると太鼓判を押す。

また、本作には現代的な解釈が加わっていることで、これまでにない恐怖が描かれているとも指摘。その要因の一つが、本作の監督を務めたアルカシャ・スティーブンソンの手腕だという。「女性監督が撮っていることが大きかったのかなと思うのですが、女性のほうが恐怖の演出として(ショッキングな映像によるテクニカルな恐怖よりも)観る者の内面にグサッとくる感じの描き方がうまいのではないかと。今回、悪魔の子の“誕生”を描くという部分でも、女性監督であることがマッチしていて、よりグロテスクと言うか、内側からくる恐怖…“悪魔の子がお腹の中から出てくる”生々しさみたいなものが描かれていた」と述懐する。

そして本作の“映像美”にも目を奪われたそうで「とにかく画がカッコいい。ちょっと風格のある画面というか、教会の撮り方や、伝統のあるシスターや神父の衣装なども相まって重厚感が出ていてよかったです。映画を観ながら、ずっと美しいなぁと思っていました」とこだわり抜かれた本作の画作りに魅了されたそうだ。

■「体内から悪魔の子が出てくる…自分ではどうすることもできないという独特な怖さがありました」

本作で怖かったと感じられたポイントについて聞いてみたところ、「体内から悪魔の子が出てくる…自分ではどうすることもできないところに独特の怖さがありました。『エイリアン』や『ローズマリーの赤ちゃん』、それに現実に存在するウイルスなどもそうですが、体内に自分の意思とは関係なく異物が入ってくるという本能的な恐怖を感じました。そのうえで本作の出産シーンの生々しさは思い切ったなと…。あと、『オーメン』でも語られていましたが、“悪魔の子を作為的に生みだす”ということを神に仕える側がやっているというのも改めて怖かったですね」。

「(作品全体の雰囲気として)シスターたちの独特の存在感もすごかったです。教会という空間の“立ち入ってはいけない雰囲気”だったり、神父やシスターたちの、神聖なはずなのだけれど不気味な佇まいなどが、本作の重苦しい感じと合っていてよかったです」。

■「聖域の中にある人間の涙と、神と悪魔の対峙を表現しています」

今回描き下ろしてくれたイラストレーションにちりばめた要素については、「『オーメン』のポスターと雰囲気も似ている『オーメン:ザ・ファースト』のティザーポスターと被せる形でイラストを作っていきました。よく見ると、ティザーにも描かれている柵もイラストの中に入っているんです。『オーメン』に登場した十字架のイメージと、悪魔の数字である“666”も入れてあります」と、本作のポスターからイメージを膨らませていったことを明かした。

また、劇中登場する“あるシーン”をイラストに活かしたという。「聖母の絵の前で佇むマーガレットの姿を捉えた場面です。奥に聖母の絵があって、手前に悪魔の顔にも見えるロウソクと電飾があり、その狭間に(悪魔の子の誕生を阻止しようと奔走する)マーガレットがいる。聖なる場所に立っていながらも(神と悪魔の間にいる)という雰囲気を表現しました」とヒロインの姿が印象的だったと語った。

「また、イラストでは電飾ではなく人間の目を描きました。悪魔の子を宿したくなかった“ダミアンの母親の涙”というイメージも込めています。だから、“666”のアザがある中央の口も叫んでいます。ビジュアル的には美しくもあるのですが、悲しい雰囲気を出しました。本作ではあの叫びのシーンが一番悲しかったですね…。このイラストでは聖域の中にある人間の涙と、神と悪魔の対峙を表現しています」。

■「教会という聖域の中に善も悪もある」

続けて「『オーメン』シリーズは(登場人物たちが)葛藤しながら、どっち側に属するかという話だと思っています。(教会にいる人たちは)みんな人生を捧げて神側に属していたはずなのに、悪魔側のささやきに心が負けてしまって…という。『オーメン』に登場するダミアンの父親もそうです。悪魔の存在に気付いて、かわいい息子を倒さなければならないと葛藤しますし、心身を試されていく。なので、人の心の中のメタファーとして、善のほうに転ぶのか、悪のほうに転ぶのかというギリギリのせめぎ合いが描かれる。きっと、教会という聖域の中に善も悪もあるのだと思います」と「オーメン」シリーズに関する自身の解釈も語ってくれた。

最後に、これから『オーメン:ザ・ファースト』を見る人に向けたコメントも。「悪魔という存在がどういったものなのかということを考えていただきつつ、自分の中にある善と悪についても思いを巡らせながら鑑賞いただくと、おもしろさが増すのではないかなと思います。あと、美術まわりの美しさとマーガレットをはじめ神父、シスターを演じている役者たちの演技もみんなすごかったので、ぜひ楽しんでほしいです!」


取材・文/編集部
 
   

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