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『青春18×2』は藤井道人監督を支える2人のクリエイターに注目!映像と音楽で彩られる、唯一無二の世界観

MOVIE WALKER PRESS

台湾で話題を呼んだジミー・ライの紀行エッセイを原作に、『新聞記者』(19)や『余命10年』(22)と数々の話題作を手掛けてきた藤井道人監督が初の国際プロジェクトに挑む『青春18×2 君へと続く道』(公開中)。日本と台湾、18年前と現在を舞台にした本作は、エモーショナルな映像と繊細な音楽によって紡がれた切なくも美しい世界観が見どころの一つとなっている。そこで本稿では、撮影監督の今村圭佑と作曲家の大間々昂にフォーカスしながら、本作の魅力を深掘りしていこう。

18年前の台湾で、高校生のジミー(シュー・グァンハン)は日本から来たバックパッカーのアミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫でどこかミステリアスな彼女と過ごすうち、いつしか恋心を抱いていくジミー。しかし、ある日突然アミは帰国することとなり、2人は別れ際に“ある約束”を交わして離れ離れに。それから長い年月を経て、人生につまづいて故郷に戻ってきたジミーは、アミから届いたハガキから初恋の記憶を蘇らせ、約束を果たすために日本への旅を決意することに。

『幻肢』(14)や『ヤクザと家族 The Family』(21)、『最後まで行く』(23)など、大学の先輩後輩である藤井監督とこれまで数多くの作品でタッグを組んできた今村は、藤井監督作品の代名詞とも言えるエモーショナルな映像を作りだす上で欠かせない存在。日台合作となった本作については「ジミーの感情を風景と連動させてどうカメラで捉えるかが重要なポイントだな、とシナリオを読んで思いました」と、これまでの藤井組とはひと味違う経験を味わったことを振り返る。

「現在を描く日本パートでは、風景のなかにジミーがいるように淡々と撮り、18年前の台湾パートではジミーの動きを追いかけるように撮る。そうやって捉え方を変えているのですが、僕がシナリオで感じた映像イメージは事前の打ち合わせでみんなと共有しました。普段の藤井組では細かく打ち合わせするというよりは各々の考えに余白を持って撮影していますが、台湾のスタッフとは言葉が通じない分、通訳を通して綿密に対話をしていました」と、国際プロジェクトならではの撮影秘話を明かす。

そして「台湾と日本では、違う人間が撮っているのかと思われるくらい脳みそを切り替え、カメラワークや俳優との距離感を変えて撮影しています。機材の力も借り、日本パートは新しいレンズを使い、台湾のシーンではとても古いレンズを使ったりしています」と、唯一無二の映像美を生みだすうえでのこだわりについても語った。

一方、映像と共に観客の琴線に触れる美しい音楽を手掛けた大間々も、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)や『最後まで行く』など藤井組の常連スタッフ。「シナリオを読み、ジミーとアミの遠い思い出を丁寧に回顧しながら、時に感情の手触り感や切なさを感じました。昔の思い出のなかで匂いを再び嗅いだり、当時聴いていた音楽を改めて聴くと、その時の感情が急に鮮やかに蘇ることがあると思うのですが、そういう少しセンチメンタルな感情に触れる感覚です」と本作のファーストインプレッションを語る。

さらに「藤井監督からは繊細でシンプルで印象的なメロディが欲しいと要望があり、ピアノを片手一本で奏でるメロディで表現できる世界観を作ってみようと思いました。ピアノの繊細な音色が白銀の世界にも合うような気がして、監督からいただいた雪景色の映像の断片を見ながらスケッチを作っていきました」と振り返り、実際に台湾の撮影現場にも足を運んだのだとか。「空気感みたいなものを日々感じ、その感覚を持ち帰れたことが台湾シーンの音楽づくりに大きく影響したと思います」。

日本映画界を牽引するヒットメイカーの1人となった藤井監督と、藤井監督が絶大な信頼を置く2人のクリエイター、そしてシュー・グァンハンや清原果耶をはじめとした日本と台湾の豪華キャスト・スタッフが彩る初恋の物語であり“人生の物語”。是非とも劇場のスクリーンで、この上なく美しい世界を堪能してほしい。

文/久保田 和馬

※記事初出時、人名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
 
   

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