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「リアルで現実的なロマンス」「せつないながらも前向きになれる」…共感する人続出の『パスト ライブス/再会』が描く人生の美しさ

MOVIE WALKER PRESS

長編監督デビューを飾ったセリーヌ・ソンが自身の実体験を基に、海外移住によって離れ離れになった幼なじみの男女が24年間のすれ違いの末に再会する様子を描く『パスト ライブス/再会』が、4月5日(金)より公開される。先日のアカデミー賞では惜しくも受賞を逃したものの、全米映画批評家協会賞作品賞など世界の映画賞を席巻し、高い評価を集めている。そんな本作はauスマートパスプレミアム会員であれば、上映期間中は土日祝日を問わず1100円(高校生以下は900円)で鑑賞できる作品となっているので、世界から愛された理由をぜひスクリーンで確かめてみてほしい。


「観る人の恋愛観や価値観、いままでの経験によってエンディングの価値は変わるかもしれません」(20代・男性)
「タイトルから少しファンタジー要素を含んだドラマチックな話だと想像していたけどまったく違いました。むしろ、リアルで現実的なロマンスを観た感じです」(30代・女性)
「セリフのひとつひとつがリアルで、役者1人1人の表情が繊細だった。自分の人生について考える機会をくれる美しい映画でした」(20代・女性)

一足早く試写会で作品に触れた観客からも絶賛の声が並んでいるように、恋愛や友情といった単純な言葉では片付けられない無類の愛や人生の機微が語られる“大人な”ラブストーリーだ。美しくもほろ苦い選択、運命を通じて人生の豊かさを浮かび上がらせる本作に心を揺さぶられた人が続出しているので、ここではアンケートに寄せられたリアルな声を紹介していく。

■長い年月を経て再会した幼なじみ男女の初恋の行方は…

韓国、ソウルに暮らす12歳の少女ノラ(グレタ・リー)と少年ヘソン(ユ・テオ)は互いに恋心を抱いていたが、ノラのカナダ移住のため離れ離れに。それから12年、互いの道を歩んでいた2人はオンラインで再会を果たすと頻繁にテレビ電話をする仲になるが、遠距離の壁に立ち塞がれてしまう。

さらに12年の月日が流れたある日、ヘソンはノラが作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚したことを知りながらもニューヨークを訪問。24年ぶりの再会を果たした2人はひと時を共に過ごし、その関係にひとつの答えを導き出す。

■せつない恋模様を織りなすリアルなキャラクター像と人間関係

ノラとヘソンとアーサー。アジア人の男女と白人男性の3人がバーカウンターに並ぶ光景を見ている客たちが「恋人か?同僚か?」と推測する会話から幕を開ける本作は、その疑問に答えるかのように、3人の不思議な関係が静ひつなトーンでつづられていく。

そんな人間関係の肝となるのがリアリティのあるキャラクターで、ノラとヘソンとアーサー、それぞれの胸中が丁寧に描かれている。そのなかでも「印象に残った」と多くの声が寄せられていたのが3人の中心にいるノラだ。もともと泣き虫な女の子だったノラは、12歳でのカナダ移住を機に“外の世界”で自分の人生を掴みたいと思い、ニューヨークで作家としてキャリアを積み上げていく。

「海外でなにかを成し遂げたいノラは一貫して『自分』を持っていて、たくましく、美しく、こういう女性になりたいと思った」(20代・女性)
「12歳から変わらないノラの志しの高さ、なりたい自分への努力や彼女の生命力の強さに共感というか憧れます」(50代・女性)

意思を貫く芯のある女性だが、同時に「自分の意志を尊重し、前向きに選択していく姿勢が強くてセクシーだけど、本当は繊細だったりと魅力的な女性だった」(40代・女性)とあるように、ヘソンとのテレビ電話によって意志が折れそうになるなど、揺れ動きながら生きるノラ。時に感情的に、時に合理的な人間味のある姿に共感を覚えた人も多かったようだ。

「私もノラのように、地元から離れて夢に向かって大きな舞台での活躍を目指しているので、共感する点が多かった」(30代・男性)
「私自身、“典型的な日本人”という価値観や考え方にフィットできず悩んだり考えたりする事があります。ノラも移民として韓国人でありながら、韓国人ではないと思う場面もありますが、過去は過去として、いまはいまとして受け入れる考え方がとても近く共感しました」(20代・女性)
「ノラがヘソンを韓国的と何度も連呼していたこと、そう感じる自身が一番韓国的と言っていたこと。私も移住しようとしたことがあるので、アイデンティティのよりどころが2つ以上ある不安定さみたいなところに共感しました」(40代・女性)

ノラが夢に向かってひた走る一方で、12年間、彼女のことを探し続けるなど、彼女のことを忘れられずに生きてきたヘソンは、ひと目でいいから会いたいという純粋な思いだけでノラの前に現れる。ネット上での一時の再会、すれ違いを経て、24年ぶりについに顔を合わせた2人の関係はドラマチックだ。

「ノラとヘソンの関係性はやはり特別だと思う」(40代・女性)
「ノラとヘソンの関係性は愛よりも深いものがあると思います」(20代・男性)
「『結婚』ではなくお付き合いだったら、また違った展開が待っていたのかも…と思いつつ、やっぱり結婚はひとつリレーションシップに重みを与えるものだとも感じました。また『初恋』は不可侵的な、その人が持つ大切な記憶という特別感があります」(20代・女性)

多くの観客の目にも“特別”に映ったこのノラとヘソンの関係を、誰よりもそばで見守るのがアーサー。アーティスト招聘プログラムでノラと出会い、結婚するアーサーだが「2人の運命を阻む、悪者の白人だ」と自身の立場を語るなど、2人の関係には敵わないと悟りながらも紳士的に振舞う寛容さがなんともせつない。

「ノラの韓国語でみる夢の寝言が理解できなかったり、アジア人に劣等感を抱いていたり、夫婦でも悩みは尽きないのだなと思った」(30代・女性)
「自分がアーサーだったらあんな寛容にノラに接することができず、嫉妬不可避だったと思います」(30代・男性)
「ノラとヘソンは過去の宝物を共有しあい、ノラとアーサーは現実的にいまを共に生きる2人だった。アーサーが嫉妬をこえ、劣等感を持つ気持ちは容易に想像できるが、ノラの性格のおかげで、ノラとアーサーの関係はいいままでずっと変わらないんだろうなと思った」(20代・女性)

ノラとヘソンとアーサー、どのキャラクターにも共感できるポイントがあるからこそ、本作が多くの観客の心に刺さり、高い評価を集めた要因となったのだろう。

■もし数年後にまた本作を観たら何を思う…?

“24年の時を経ての再会”が語られる本作では、空白の“時間”が彼らに変化をもたらしたり、逆に変わってない部分があったり…と時の経過によるモノの見方や人生の変化といった普遍的な性質が描かれている。「そんな本作を数年前もしくは数年後に観た場合、現在と抱く感想は違うと思うか?」と質問を観客に投げかけてみた。

「おそらく、もっとそれぞれの登場人物に共感しながらも、自分の選択をより運命的なものとして肯定できている気がします」(20代・女性)
「結婚している、付き合っている人がいる、失恋したなどの経験をしてから観ると、よりキャラクターへの共感が強く感じられるのではないかと思います」(20代・女性)
「いまは20代なので、10年後には見え方が変わっていると思います。自分に愛する人ができて結婚をして、もしくは結婚をしないという選択をした後に観ると立場が変わると思うので、長くこの作品を愛していこうと思います」(20代・男性)
「自分がヘソンと同じ未婚なのもありますが、ひょっとして結婚したらアーサーの心理状態になるんじゃないでしょうか」(20代・男性)

若い世代からは上記のような、今後の経験によって感じることや感情移入するキャラクターが「変わると思う」という意見が数多く並んでいた。一方で人生経験豊富な世代からは

「20年前ならここまで理解はできなかったかも。何年も忘れられない恋があったからこその共感はあったと思います」(40代・女性)
「もっと若い頃に観ていたらラストシーンに納得していなかった気がします。歳も経験も重ねたいまだからあれでよかったと思えるし余韻を噛み締められるのだと思います」(50代・女性)
「自分の生活はもう落ち着いていて、このあと大きく変わることはないのではないかと思うが、もし独身の若い時に観ていたら違った感想を持ったかもしれない。ただいつでもアーサーに一番共感すると思う」(50代・女性)

など、数年前なら受け取り方は違ったかもしれないという条件付きで今後も作品への印象は「変わらないと思う」派が大多数。見事に真っ二つに割れる結果になったが、年代や経験によって思うことが大きく変わる作品だということは、本作がいかに丁寧に人生を描いているかを証明していると言えるだろう。

■鑑賞後に思わず考えたくなる、人と人とを結ぶ運命的な縁の存在

そんな本作のキーワードとなっているのが、日本で言う“縁”に当たる“イニョン”と呼ばれる韓国の考え方。前世を意味するタイトルの「パスト ライブス」もこの考え方に由来しており、作品ではノラとヘソンとアーサーがそれぞれの運命的かつ不思議な縁を示すキーワードとしてたびたび登場する。

「仏教の輪廻転生の考えに根付いており、純日本人の自分にはすんなりと理解できる考えではありましたが、欧米圏ではよりロマンチックに感じる表現に思えて、フレッシュな状態でその考えに触れられる境遇を羨ましく思いました」(20代・男性)と日本人にとっては割と身近な考え方。ゆえに映画を観てそんな自身の過去の“縁”を思い出した人も多かったよう。

「採用試験である面接官に『私はあなたに会ったことがあるかもしれない。私たちは似ている』と言われ、私の境遇や生き方を当てられた時、この人とはほかの世界で縁があったのかと思いました。面接の後、人生のアドバイスもくださって、その方のアドバイスも参考にいまを楽しく生きています」(20代・男性)
「転校した先で一生の友達ができたり、社会人になって異動した先で出会った人と忘れられない恋愛をしたことがありました。起こる前には自分が想像もしなかった展開がいつも待っているのが人生だから、すべて予定されていた『縁』だと感じることが多いです」(20代・女性)
「自分から離れてしまったけど、いつまでも大切に思う人のことを思い出した。映画ほどではないが遠くに離れてしまって偶然再会することはないが、映画と同じ年頃のときに再会していたら、映画と同じような時間を過ごして、同じように自分の暮らしに帰っていったと思う」(50代・女性)

また「運命という言葉は正直、私には辛辣です。偶然が偶然だったからこそ幸せな瞬間も多くあります。それでも自分が前を向くために、きっと必要な言葉なのだと思います」(20代・女性)といった捉え方にもあるように、縁や運命とはなんなのか、その意味を追求する作品となっている。

幼なじみ2人の再会を題材に、甘い瞬間からせつない別れまで悲喜こもごもが語られる『パスト ライブス/再会』は「大切な人、失いたくない人がいる人へ。いまに辿り着いた人生を肯定して、より大事なものを大切にできるようになる映画」(30代・女性)。

「いまある“縁”についてとても考えさせられました。過去に後悔があったとしても、それでもこうしてここに居る自分、それはなににも変えられないし、過去の自分があったからこそ。たくさんの“結ばれなくてもつながっている縁”も含めて人生、とせつないながらも前向きに思える作品でした」(20代・女性)
「結婚について考えているいまのタイミングで観て、本当によかったです。私も幼なじみと付き合っているので、ノラとヘソンの関係に共感しつつ、いまの彼女との付き合い方について改めて考えさせられました」(30代・男性)

これらの言葉が示しているように人生のいかなる瞬間をもやさしく包み込み、観客のこれまでとこれからをも肯定し、生きることの美しさを再確認させてくれる1作となっている。ぜひ劇場で鑑賞すれば、いろいろと想いを巡らせたくなることだろう。

構成・文/サンクレイオ翼
 
   

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