モノマネ芸人の清水アキラさんが研さんのモノマネをする際は、テープで鼻を引っ張って鼻の穴を上に向けています。これは研さんと言えば鼻というイメージがあるからではないでしょうか。
しかし、解答者の中山秀征さんや陣内智則さんは、研さんのいちばんの特徴である鼻に触れないのです。バラエティタレントの代表のような存在である2人が、そこに気づいていないわけがありません。むしろ、現在のバラエティ番組に慣れているからこそ、触れていないのだと思われます。
触れない理由は、最近、問題視されているルッキズム(外見で人を判断したり、容姿を理由に差別的な扱いをしたりすること)にあるのではないでしょうか。
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お笑い的に言うと、鼻をいじらないことで笑いは半減するし、いじられる側の研さんにとっても本意ではないと思います。
筆者は以前、研さんに、今だとルッキズムの観点から放送できないであろう、愛川欽也さんと共演したミノルタカメラのCM(1974年放送)撮影当時のお話を伺っています。
同CMは欽也さんと研さんが横並びで正面を向き、欽也さんがカメラを持って「美人しか撮らん」と宣言して、研さんにカメラを向けます。しかし、欽也さんは「だからシャッターを押さない」と言って研さんを撮らないという内容なのです。
「あのCMは本番1発撮りだったんですよ。欽也さんがCMで言った『美人しか撮らない』はアドリブでしたから。撮影前に欽也さんに『ナオコちゃん、僕の横に立ってて。僕がしゃべるから』って言われて。
それで『よ~い。スタート!』って撮影が始まったら、欽也さんが『美人しか撮らない』って言って私にカメラを向けるんですけど、すぐにやめちゃうんですよ。
それで、欽也さんが『だから僕はシャッターを押さない』って。私はおかしくてずっと笑ってましたね」
この容姿いじりのCMをきっかけに、研さんはコメディエンヌのイメージが浸透し、後に『8時だョ!全員集合』(TBS系)や『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)などのお笑い番組への出演が増えたそうです。
近年だと、逆に、芸人のインタレスティングたけしさんが、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)に出演した際に吃音だったことで、『日本吃音協会』がTBSに「吃音者に対する差別と偏見を助長する」と抗議文を送付。それ以降、インたけさんへの出演オファーが激減したということがありました。
過剰な配慮は、当人たちに仕事を得る機会を失わせることになりかねません。本人が納得していることに関しては、もう少し考えを改めてもいいのではないでしょうか。
インタビューマン山下
1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退しライターに転身。しかし2021年に芸人に復帰し現在は芸人とライターの二足のわらじで活動している。