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朝ドラ『ブギウギ』草彅剛が要求する“ジャズ”の精神 スズ子と秋山それぞれに恋の予感も

Real Sound

『ブギウギ』写真提供=NHK

 『ブギウギ』(NHK総合)第28話では、羽鳥善一(草彅剛)とスズ子(趣里)のマンツーマンレッスンが始まる。前日に楽譜を読み込んできたスズ子だが、「昨日、福来くんの声を聞いたらちょっと書き直したくなっちゃってね」と話す羽鳥は、新たな楽譜を手渡した。物語冒頭から、ジャズを得意とする羽鳥らしいアドリブの利いた楽曲制作への姿勢が感じられる。

参考:朝ドラ『ブギウギ』第29話、スズ子(趣里)が羽鳥(草彅剛)の自宅を訪ねる

「どないな具合で歌たら、よろしいでっか?」

 自分がこれまで歌ってきた歌とは雰囲気の異なる「ラッパと娘」に困惑するスズ子に、羽鳥はのんびりとした口調で「まあ、好きに歌ってごらん。福来くんが好きなように歌うのが一番いいんだ」と返した。羽鳥の台詞から、羽鳥はスズ子が“スズ子”として歌う歌声を求めていることが何となしに伝わってくるものの、スズ子には羽鳥の真意が捉えきれない。スズ子は羽鳥とのレッスンに“真面目に”向き合っている。だが、スズ子が梅丸少女歌劇団(USK)で歌うようなのびやかな歌声を披露すると、羽鳥は「USKではそう歌うよねえ。それはそれで、すばらしい」と言いながらも、「何だか聴いていてあまり楽しくないぞ? ジャズは楽しくなくちゃ」と促した。

「福来くんは今歌っていて楽しかったかい? ワクワクした?」

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 羽鳥の台詞には、羽鳥が求める歌声のヒントが詰まっているものの、ジャズがいまいちピンと来ないスズ子にとっては、具体的な指示のない羽鳥の要求はとても難しい。

 羽鳥を演じている草彅は、人柄は穏やかだが、楽曲へのこだわりが強く、良い歌声を引き出すまで徹底した姿勢を貫く羽鳥の人物像を見事に演じている。羽鳥から「違う」と言われ思わず謝ってしまったスズ子に、羽鳥は「謝らなくていいんだよ。悪いことしてるわけじゃないんだから」と淡々と述べると、すぐさま「はい、トゥリー、トゥ、ワン、ゼロ」とレッスンに戻る。スズ子の歌声が求めるものと違うことに、羽鳥は憤るわけでも苛立つわけでもない。羽鳥は決して感情的にならない。違うものは違う、だから求める歌声が引き出されるまで、何度でも繰り返し歌わせる、ただそれだけのことなのだ。

 松永(新納慎也)が言っていたように、スズ子は自分で何かをつかむことが求められている。とはいえ初日は、およそ500回出だしだけを歌い続け、何もつかむことはできなかった。

 物語中盤から終盤にかけては、秋山(伊原六花)とスズ子の恋の予感が描かれた。中山(小栗基裕)と松永に惹かれる2人はまだ、その心を恋とは断言していない。けれどこの素直な感情が、秋山のダンスとスズ子の歌を前進させることだろう。

 空き地で歌うスズ子にはまだ「バドジズ」がつかめていない。暗がりで悔しそうに顔を歪めるスズ子が印象に残る。旗揚げ公演初日までに、スズ子は「バドジズ」することができるのか。明日のレッスンが楽しみだ。

(文=片山香帆)

 
   

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