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役所広司ら俳優陣とオーディションから選ばれた外国人役の若者が問いかける“家族”のかたち「ファミリア」

キネマ旬報WEB

息子役の吉沢亮も、自分の幸せと父親を思う気持ちのせめぎ合いをごく自然に体現しているし、敵キャラとも言える憎まれ役を、悲しみを内に秘めて説得性を持たせて演じたMIYAVIの凄みも見逃せない。さらに外国人役のキャストは、本業はプロの格闘家というサガエルカスを始め、皆これが映画初出演だというから驚く。日本人にも成れない、ブラジル人でもない、そんな中途半端な存在としての行き場のない苦しみを体当たりで演じていて、その演技は目を見張るばかりだ。

今の空気感を醸し出すリアリティあふれる演出

メガホンを取ったのは、「八日目の蝉」や「ソロモンの偽証」2部作、「いのちの停車場」など、骨太の人間ドラマに定評のある成島出監督。今回も移民問題を始めとした社会性を前面に押し出しながら、家族の意味を問いかける深みのあるテーマを織り込んだ。

急増する海外からの移住者に対し、眉をひそめる向きは多いが、それは相手のことをよく知らないからに過ぎない。コミュニケーションを重ねてお互いに分かり合えば、文化や風習の違いを乗り越えて、家族以上に大切な存在になり得るはずだ。

そんな監督の思いが凝縮されているのが、団地の広場で開かれたバーベキューパーティーのシーンだろう。陽気なサンバのリズムが流れる中、シュハスコなどブラジルの料理が次々と振る舞われ、誠治たちを親密にもてなす。脚本家のいながきの実家近くにある、実際に多くのブラジル人が住む団地で撮影されたそうで、道理でドキュメンタリーのようなリアリティが感じられるわけだ。まさに映画の中に今の空気感が、ぎゅっと閉じ込められているような気がする。

これらの秘話は、Blu-rayの特典映像にふんだんに盛り込まれている。メイキング映像には、くだんのバーベキューパーティーで「サウーヂ(乾杯)」の掛け声の打ち合わせを重ねる様子を始め、とっておきの場面の舞台裏が満載。日本人のキャスト、スタッフとブラジル人らが互いに尊敬し合って、良い映画にしようという思いがひしひしと伝わってくる。

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またサガエルカスやアリまらい果ら、外国人役を演じた若手出演者による座談会は、特典ならではのお楽しみだ。ブラジルの正月とクリスマスの過ごし方の違いなど、意外なトリビアがクイズ形式で披露され、お得感が強い。映画本編で外国人との相互理解や家族の意味について深く思いを巡らせた後、ほっと一息つくには最高のおまけかもしれない。

文=藤井克郎 制作=キネマ旬報社

 

 

「ファミリア」
●6月2日(金)Blu-ray&DVD発売(レンタルDVD同時リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:5,280円(税込) 
【映像特典】
予告編・TVSPOT集/メイキング映像/完成披露上映会&公開記念舞台挨拶/ファミリア・トーク

●DVD:4,290円(税込)
【映像特典】
特報/予告編

●2022年/日本/本編122分
●監督:成島出
●プロデューサー:伊藤伴雄
●脚本:いながききよたか
●音楽:安川午朗
●出演:役所広司、吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊、MIYAVI、佐藤浩市

●発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© 2022「ファミリア」製作委員会

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