「アベレージはよくなかったですが……。この日に向けて、ピークを持って来られるようにやってきたので、60mを投げられてすごく良かったです」
投げる意識が強かったばかりに(上半身と下半身が連動せず)手投げになってしまっていたという若生。「4投目を丁寧に投げたことが5投目の60mにつながった」東京大会に出場できず、「落ち込みまくった」と若生。挫折から立ち上がり、1年かけて自身の投げのイメージを確立したという。「(昨年の段階で)記録を求めたら、(出場できなかった)東京大会のように挫折を経験してしまうとコーチにアドバイスされ、しっかりとイメージをつくってきたことが今シーズンにつながっていると思います」
回り道で初の世界パラ陸上競技選手権への切符を掴んだ全日本チャンピオンは、「素直に嬉しい気持ちでいっぱいです。世界で戦える選手になれるように、もっとレベルアップしていきたいです」と言葉に力を込めた。
この日、東京大会に出場できなかった悔しさを「少し乗り越えられたかな」と語った若生。約2ヵ月後の初の世界パラ陸上競技選手権では何を掴んでパリパラリンピックへのステップにするのか。ぜひ注目したい。
高校では強豪校の野球部でキャプテンを務めた経験がある。「低い弾道で鋭く投げるのが自分の強み」パラ陸上の花形ともいえる走り幅跳びでは、同じ視覚障がい・T12クラスの新星・石山大輝が自身の持つ日本記録を更新した。石山は、昨年の日本パラ陸上競技選手権でパラ陸上デビュー。3月のドバイグランプリでは6m93の日本記録で優勝し、瞬く間にエース格へと成長した。
100mでは2位だった石山。高校1年時に網膜色素変性症が判明した広告の後にも続きます
「調子が良かった」という今大会は、6回の跳躍をすべて成功させ、3回目で追い風参考記録ながら7m11の大ジャンプ。6回目には7m07の日本新もマークして「やったりました!」と報道エリアでコメントした。
「競技の中で『今の跳躍はこうだったから、次もうちょっとこうしたら伸びそうやな』って考えながら修正して跳ぶのが好き。(今回の試合は)腕振りのタイミングを修正しました」と充実感を漂わせた。
勢いに乗る石山は、東京大会で日本が銅メダルを獲得したユニバーサルリレーの有力メンバーとしても期待される。7月の世界パラ陸上競技選手権では、100m(T13)で10秒98のアジア新記録をたたき出した川上秀太、400m(T13)でアジア新を記録した福永凌太らとともに、その名を世界にとどろかせるに違いない。
三段跳びなどに取り組んだ後、大学から短距離にも挑戦。現在、順天堂大大学院に通う23歳だtext by Asuka Senaga
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