2人目の三笘に対してもキックとほぼ同時に反応して、そこにボールがくるのが完璧に分かっているかのように、右腕を伸ばして止めてみせた。南野のキックは方向さえ間違わなければ止められるかもしれないが、この三笘のキックは方向が読めていても、なかなか止めるのは難しいコースだった。
3人目の浅野拓磨にはGKから見て左側に決められたが、4人目では吉田のキックも完璧なタイミングで右に飛んで止めている。キックのギリギリまで微動だにせず、ジャストのタイミングを見計らっていたこと。これらを考えると、蓄積されたPKストップの自信と経験に裏打ちされているように見える。
■タイミングを外すキックが通用しない理由
PKに対するGKの止め方としては、シュートを打たれる前に飛ぶ方向を決めておく、もしくは打たれるまで動かずに蹴るまで見るという大きく2パターンがある。
飛ぶ方向を決めていると、キックの前に体が動いてしまいやすい。しかし、リバコビッチはキックの瞬間まで全く動かなかった。両手を左右に広げるなどの動作をしないのも、キッカー側に予備動作として読ませないためのものかもしれない。
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GKのタイミングを外して正面を蹴る選手や、コロコロPKと呼ばれる、GKの逆をついて決めるタイプのキッカーもいるが、リバコビッチを相手にすれば、それは通用しない可能性が高いだろう。
おそらく読めていてもリバコビッチが届かないのは左右の上隅だけ。ただし、PKでそこに狙って蹴るのは正確な技術プラス、よほど勇気がある選手だけだろう。PKストッパーとしては、メキシコのギジェルモ・オチョアが有名だが、それ以上と言えるかもしれない。
準々決勝から先でもPK戦があるかもしれない。その時に日本戦と同じパターンで行くのか、違った対応を見せるのか。また延長戦になれば、試合終了が近づくにつれて、相手に少なからずプレッシャーになりそうだ。
文・河治良幸
写真・Getty Images