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『クロサギ』と『鎌倉殿の13人』に共通点? 父を求めてさまよう青年の物語

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『鎌倉殿の13人』(写真提供=NHK)

 TBS系「金曜ドラマ」枠で放送されている『クロサギ』は、詐欺師の黒崎高志郎(平野紫耀)が主人公のドラマだ。タイトルのクロサギとは、詐欺師専門の詐欺師のこと。黒崎は、人を騙し金銭を奪うシロサギや、色恋を餌とするアカサギを罠に嵌めて、逆に大金を騙し取り、警察に逮捕させる。法で裁けない詐欺師を詐欺で倒すクロサギは、悪の力で悪を倒すダークヒーローだ。

【写真】“もう一人の親父”だった御木本

 物語は1話完結で、黒崎が様々な詐欺師を騙し、騙された被害者を助ける姿が描かれていく。様々な騙しの手口が毎回披露されるのが本作の面白さで、「詐欺防犯マニュアル」としても楽しめる。そして全話を通して描かれるのが、詐欺師に家族を奪われた黒崎の復讐譚である。

 原作は黒丸と夏原武(原案)が長期連載していた漫画『クロサギ』(小学館)シリーズ。本作は2006年に一度、山下智久主演でドラマ化されている。脚本は2006年版と同じ篠崎絵里子。つまり、同じ原作を同じ脚本家でドラマ化しているのだが、作品から受ける印象はだいぶ違う。

 主演の山下の掴みどころのない飄々とした芝居の演技もあってか、2006年度版の『クロサギ』は、表面上はコミカルなやりとりが続き、物語の節々でシリアスな感情が浮上するという印象だった。

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 対して今回の『クロサギ』で主演を務める平野の芝居はとてもシリアスだ。どれだけおどけて見せても、怒りや焦燥感がにじみ出ているため、黒崎の抱える「常にイライラしている思春期の少年のような気持ち」が画面全体を支配している。そのため2006年度版よりも、青春ドラマとしての側面が際立っている。

 また2006年度版では、検事を目指す大学生・吉川氷柱(堀北真希)と黒崎の恋愛ドラマとしての要素が強く押し出されていたが、2022年度版ではホームドラマとしての側面が大きくなっている。中でも父親の存在感は大きく、ヒロインの氷柱(黒島結菜)の父親・吉川辰樹(船越英一郎)が黒崎を心配して会いに来る場面が繰り返し登場する。

 詐欺のノウハウを教えてくれた詐欺師界のフィクサーの桂木敏夫(三浦友和)のことを黒崎は“親父(おやじ)”と呼んでいるのだが、吉川や桂木のように、亡くなった父親の代わりを務める男が、黒崎の周りには何人も登場する。父を死に追いやった大物詐欺師・御木本(坂東彌十郎)は、「桂木は今のお前の父親だよ」と言って、父親を求めて翻弄されている黒崎の弱さを突くのだが、最後に男として弱々しい姿を晒した御木本もまた、黒崎にとってはもう一人の父親と言える存在だったのかもしれない。

 御木本を演じる坂東彌十郎は、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)でも、主人公の北条義時(小栗旬)の父親を演じていたが、強い主(父親)を求めて若者が翻弄された末に闇落ちしていく物語という意味において『鎌倉殿の13人』と『クロサギ』はとてもよく似ている。

 『鎌倉殿の13人』で義時の友人の三浦義村を演じる山本耕史も『クロサギ』に出演しており、腐った大企業しか狙わないシロサギ・白石陽一を演じている。映画『シン・ウルトラマン』で、礼儀正しいサラリーマンを模した怪しい外星人(宇宙人)のメフィラスを演じて以降、裏で何かを企んでいる胡散臭い男を演じさせると右に出るものがいない俳優となった山本だが、胡散臭い存在感は『クロサギ』でも健在である。

 黒崎にとって白石は、時に敵対し時に協力関係になる関係だが、彼と話している場面は兄に甘える弟のようにも見える。その意味でも2022年度版『クロサギ』は、詐欺師集団を擬似家族に見立てたホームドラマとしての側面が強まっている。

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