「試合でビビっているところは見たことがないです。気持ちの波がなく、常に平常心なのは、あいつの特徴かなと思います」と西村の内面について語る上羽監督。技術面に加えて、精神的な強さも西村の強みの一つだ。
プロでは野手一本で勝負西村瑠伊斗(京都外大西)
下級生から打力を見せつけていた西村が本塁打を量産できるようになったと感じたのが、3年生に入ってから。「力を入れないことと、体が開かないことを自分の中でも意識していましたし、監督からも言われていました。やっとそれがつかめてきて、ホームランも出てきたと思います」と本塁打量産の秘訣を語る。
上羽監督によると、1年生の頃は強く振ろうとする傾向があったそうだが、ジャストミートすれば、力いっぱいに振ろうとしなくても本塁打を打てるコツをつかんだことで、コンタクト率も上がり、結果的に本塁打も増えるようになった。
西村の打撃フォームで特徴的なのが、世界記録の868本塁打を記録した王貞治氏に似ていることだ。中学時代はチーム方針でノーステップで打っていたそうだが、「足を上げた方がタイミングもとりやすいし、力も入るかなと思ったので」と高校に入ってから足を上げる打法に変えた。
また、他の打者に比べてグリップの位置が低いことに関しては、「力を抜こうと思ってやっていたらあの位置になった感じです」と説明した。彼の話を聞いていると、脱力への意識が高いことが伝わってくる。さらに打席では直球にタイミングを合わせて、変化球に対応することを意識しているという。直球待ちで変化球を投げられても、体を残して長打を打てるのが西村の長所だ。178センチ、77キロと際立って大きな体をしているわけではないが、技術力の高さで本塁打を量産している。
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夏の大会前はスランプに陥っていたそうだが、「何とか1回戦で一本打てたので、そこから調子が上がっていった」と1回戦の洛北戦で本塁打を放つと、そこから勢いに乗り、6試合で4本塁打の大暴れ。「球がよく見えていて、どんな球が来ても正直、打てると思っていました」とゾーンに入っているような感覚だったそうだ。
特に会心の一発だったのが、準々決勝の立命館宇治戦。8回表に西村の安打などで5点差を追いつくと、同点で迎えた9回表に西村が決勝のソロ本塁打を放って、勝利を引き寄せた。「ベンチもメチャクチャ迎えてくれたので、嬉しかったです」と思い出に残る本塁打となった。
打撃ではこれ以上ない活躍を見せた一方で、春季大会後に肩を痛めたため、夏の大会はリリーフによる1試合の登板に留まった。他の投手陣で何とか踏ん張ったが、準決勝で力尽きる形となり、龍谷大平安相手に5対12の8回コールド負け。甲子園出場は叶わなかった。
「後々になって、みんなに言われるんですけど、自分が投げられていたら(龍谷大)平安戦もあんな試合になっていないだろうし、甲子園にも行けたかもしれないので、自分の肩が万全だったらなという後悔があります」と悔やむ西村。この悔しさはプロの世界で晴らすしかない。夏の大会が終わってからも毎日のようにグラウンドに顔を出し、練習を続けている。
高校では二刀流として活躍していたが、「肩も壊していた時期もありましたし、自分でもバッターの方が向いていると思う」とプロでは野手一本で勝負する予定だ。
「3段階くらい上の世界に行くので、しっかりこれから体を作っていって、獲って良かったと思ってもらえるようにしたいです。初めの頃は高校の時みたいにホームランが出るわけではないので、まずは最多安打などで活躍できたら良いなと思っています。トレーニングしてパワーもついたら、ホームラン王も狙っていきたいです」
今後に向けてこう抱負を語った西村。超高校級スラッガーの今後に要注目だ。
(取材=馬場 遼)