『ファイナルファンタジー7 リバース』プレイ前に知っておけばより楽しめる?

【画像】えっ、スタイル抜群! これが「リメイクでさらに美麗になったティファ」です(10枚)

ニブルヘイムで、そしてスラムで過ごしたティファの半生がここに

 名作『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)を原作に、3部作構成で作り直すリメイクシリーズが現在展開中です。その2作目にあたる『ファイナルファンタジー7 リバース』(以下、FF7 リバース)が2024年2月29日(木)に発売を迎えました。

 このリメイクシリーズでは、原作の物語をベースに、その描写はさらに深掘りされています。主人公のクラウドはもちろん、仲間たちや主要な登場人物も濃密に描かれており、その心理や行動理由などがより明確です。

 ですが、ゲーム本編だけで彼らの全てを描き切ることはできません。ボリュームという意味でも限界がありますし、ゲームのテンポも損なってしまいます。

 もちろん、物語の把握はゲームの内容だけで十分足りていますが、もっと詳しく知りたい、キャラクターへの理解を深めたいと考える人もいることでしょう。そんな人々にお勧めしたいのが、『FF7』関連のシナリオを多数手がける野島一成氏が記した小説 『ファイナルファンタジーVII REMAKE Traces of Two Pasts』(以下、Traces of Two Pasts)です。

 この小説は主に、2大ヒロインである「ティファ」と「エアリス」の前日譚が、思い出語りという形で綴られています。エアリスの物語も興味深いのですが、本編以前からクラウドとの繋がりがあり、物語上でも重要な存在となるティファの前日譚は、『FF7 リバース』のストーリーを理解するのに大いに役立ちます。

 理解を深めるには『Traces of Two Pasts』を読んでもらうのが一番ですが、いきなりお勧めされても戸惑うことでしょう。そこでまずは、この小説でどんなティファが描かれているのか、その要所を分かりやすくお伝えします。

●ティファがクラウドを意識したのは、やっぱりあの時!
 ティファの物語は、ニブルヘイムで暮らす幼い少女時代から始まります。まだ子供だった彼女は、仲の良い男の子たちとよく遊び、時に「お茶会」なども開きながら過ごしていました。しかし、ティファとの仲を深めたがる幼なじみと比較すると、同じ村で育ったクラウドとの接点は少なめです。

 そんな幼なじみたちも、憧れと自身の成功のため、大きくなると村を飛び出してミッドガルに向かいました。まるで自分だけ取り残されたような寂しさを覚えるティファですが、同じように「村を出る」と明かすクラウドとのやりとりを通じて、この時に「ふたりで過ごしたいと思う」という恋心を抱きます。

 クラウドが村を出ると告げた給水塔のシーンは作中にありますが、その前後の心情や「好き」という気持ちが初めて芽生えた瞬間が、『Traces of Two Pasts』で明確に記されていました。

●師匠への弟子入り、そしてちょっと意外なお金稼ぎ
 セフィロスを追いかける日々のなかで、ティファの高い戦闘能力は、大事な戦力のひとつです。その卓越した格闘術を身に付けたきっかけもニブルヘイムにあり、教えを受ける師匠との出会いが小説に記されています。

 村を訪れた格闘術師範の「ザンガン」は、村人たちに格闘術……ではなく、長生き体操を教えます。年寄りも多い村なので、格闘よりも体操の方が需要は高いのでしょう。そしてこの体操でティファの素質を見抜き、ザンガンは彼女を弟子とし、自身の格闘術を伝授しました。

 ザンガンが村を去った後も、受け取った秘伝書をもとにティファは鍛錬を続けます。それと共に、お年寄り相手の体操教室を行い、1時間あたりひとり6ギルの収入を得ていました。そうした日常が垣間見えるのも、本書ならではの醍醐味でしょう。

 ティファの日常はおおむね穏やかで、彼女は己の鍛錬に打ち込んでいました。しかし、平穏な日々が一変する事件──ニブルヘイムの炎上が、ティファの人生を一変させます。



『FF7 リメイク』の前に、何があったのか。小説『ファイナルファンタジーVII REMAKE Traces of Two Pasts』には、ティファの前日譚も描かれている

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ティファの舞台は、ニブルヘイムからスラムへ

●スラムに着いた経緯と、彼女を縛る借金の重圧
 ニブルヘイムの一件ですが、実はこの小説ではほとんど描かれていません。ゲーム内で詳しく描かれているので、こちらでは意図的に省いたのだと思われます。原作をプレイしている人なら、その狙いも予想がつくことでしょう。

 ティファの回想は、神羅の調査隊が来た後、スラムの病院で目が覚める瞬間へと飛びます。ニブルヘイムの事件で重傷を負った彼女は、コレル村で緊急手術を行った後、スラムの医師「ダミーニ」のもとへ運ばれました。

 重傷を負う経緯に神羅が関係しているため、本社の化学部門がティファの受け入れを認めたものの、ザンガンが強く反対。そして、弟子のひとり「ラケス」の母親であるダミーニが営むスラムの病院へと連れてきた、といった経緯も明かされます。ティファがなぜスラムに流れ着いたのか詳しい経緯が分かるのも、この小説の恩恵です。

 同時に、ティファがそのままスラムに身を置くのか……いえ、置かざるを得なかったのか、その理由がここで明かされます。ダミーニがティファに行った施術は最新のもので、その治療費は膨大。村では父親が亡くなっており、ティファはその身ひとつで運ばれてきたため、治療費を払えるアテはどこにもありません。その結果、彼女は莫大な借金を背負い、分割での支払いが終わるまで、何年もスラムから出られないことが決まったのです。

●スラムで生きる日々と、本編に繋がる新たな出会い
 提供された住居は最低限の作りで、家賃は1日15ギル、シャワーは別で1回3ギル。紹介された饅頭売りの仕事は、100個売ると60ギルをもらえるため、500個や1000個といった売り上げを目指し、その報酬を必要経費と借金返済に充て、残りは貯蓄する日々が始まります。

 生活は苦しいものの、饅頭売りの仕事はやり甲斐があり、スラムで暮らす毎日は暗いだけではありません。病院を通じてマーレと知り合い、来店をきっかけにジェシーやビッグス、ウェッジとも縁を結びました。マーレは『FF7 リメイク』に登場したアパートの大家さん、3人は原作でもお馴染みのアバランチメンバーです。

 特にジェシーとの出会いは、ティファに大きな影響を与えます。ティファの過去を知り、励ますジェシーに向かって「ジェシーが初めてここにきてくれた日から、私、孤独じゃないですよ」と告げるほど、その存在は大きなものになりました。

 また、マーレやジェシーと縁で、酒場「セブンスヘブン」とも巡り合います。『FF7 リメイク』ではティファが看板娘として働いていましたが、この時は別の人物がオーナーを務めていました。後にティファは、この店を存続させるため、饅頭売りで何年もかけて貯めた16万ギルもの大金を費やします。

『Traces of Two Pasts』で彼女のこれまでを振り返ってみると、幼く甘酸っぱいひとときと少年たちの旅立ちで終わりを迎えた幼年期、師匠との出会いとザンガン流の体得、そしてニブルヘイムの事件で一変した人生と、急転直下な歩みだったことが分かります。

 村で体操を教えていた彼女が、膨大な借金を背負ってスラムから離れられなくなり、幾年も饅頭を売り続け、セブンスヘブンを守るために16万ギルを投じる……これまでの半生、特にスラムに移ってからは、お金と深く関わる日々を送っていました。ゲームでしかティファを知らない人にとっては、意外な一面だったかもしれません。

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 小説ではこの先も続きがあり、バレットマリンとの出会い、ジェシーとの再会、持ち去られた16万ギルなど、さらなる展開がティファを待ち受けています。借金を含めた物語の顛末が知りたい人は、『Traces of Two Pasts』を直接読んで見届けましょう。

『Traces of Two Pasts』では、エアリスがスラムに辿(たど)り着き、そこでエルミナと過ごした日々も描かれています。リメイクシリーズを深く知るにはうってつけの一冊なので、興味が沸いたらご一読ください。