SLIMの本来の着陸姿勢を示したCG。実際にはひっくり返ってしまった
JAXAの探査機「SLIM(スリム)」が月面着陸に成功! でも、ちょっと待ってほしい。月面着陸は世界で5番目だし、アポロ11号のように人を月に運んだわけでもない。探査機はひっくり返って着陸してたし、この後地球に帰ってくるわけでもない。
それでもSLIMの成し遂げたことには大きな意義があるという。いったい何がスゴいの?
■世界初のピンポイント着陸1月20日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小型無人探査機「SLIM」が日本初となる月面着陸に成功した。エンジントラブルによってほぼ逆立ち姿勢での着陸になり、発電用の太陽電池パネルに太陽光が当たらないトラブルはあったが、その後太陽の向きが変わり電源も復旧。さまざまな調査を行なっている。
元NASA研究員で、ポッドキャスト『佐々木亮の宇宙ばなし』を配信する佐々木亮さんによると、まずなんといってもSLIMの着陸方法が革新的だったという。
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「SLIMは世界で初めて、月面でのピンポイント着陸を成功させました。従来の他国の月面着陸とは比較にならないほど高精度だったんです」
SLIMは2023年9月7日、種子島宇宙センターから打ち上げられた
今までの月面着陸の精度はどの程度だった?
「数十㎞程度の誤差が出るのが普通でした。アポロ11号の頃はもっとラフで、日本でいうと『東京に行きたいけど、関東平野のどこかに降りたいな』というくらいの精度です。
というのも、時速約6400キロなどの超高速で飛ぶ着陸船を軌道や速度の計算だけでコントロールするわけですから、どうしても大きな誤差が出てしまうんですね。
ところが、今回のSLIMは目標点からわずか55mの所に着陸しました。そのスゴさがわかりますよね」