人間の限界にチャレンジするエクストリームスポーツの一つでもあるフリーダイビング。生きるために必要な空気を得られない環境下、深海の世界に挑むダイバーたちの姿は神秘的で、畏怖すら感じさせる。一方で、一歩間違えれば危険を伴うスポーツであることは間違いない。そのため競技中は安全のために、さまざまな役割がサポートとして必要になってくる。今回はその一つであるセーフティダイバー、特に海洋競技におけるその役割にスポットを当てる。

目次

フリーダイビングの海洋競技とは
フリーダイビング海洋競技会での事故
セーフティダイバーの役割
セーフティダイバーに求められるスキル
“縁の下の力持ち”セーフティダイバー
大会を支えるワールドダイブのウエットスーツ

フリーダイビングの海洋競技とは

フリーダイビングの海洋競技ではスキューバダイビングのように呼吸するための器材を使わずに、自身の肺の空気だけで潜水する。事前に申告した深さに設置されたタグを取って浮上し、ジャッジ(審判)にタグを渡す。一連のパフォーマンスは定められた手順にのっとり行われる。達成された深さ1mにつき1ポイントが与えられ、獲得ポイントを競う。手順を間違えたり、タグを取り損ねたりといった違反が発生した場合はペナルティが適用され、減点される。ジャッジはパフォーマンス終了後、ホワイトカード(違反なし)、イエローカード(違反あり)、レッドカード(失格)を用いて評価する。スコアが高い競技者ほど高い順位にランクされる。国際競技はAIDAやCMASいったフリーダイビングの国際機関のもとで行われており、世界各地で毎月さまざまな競技会が開催されている。

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フリーダイビング海洋競技会での事故

危険と隣り合わせのスポーツ。さぞかし事故も多いのではと思われがちだが、競技中の死亡事故は2013年のバハマ大会で発生した一件のみ。この大会まで、過去21年間で35,000回以上の競技が行われた中で初めての死亡事故でもある。その後、現在に至るまで競技中の重大な事故は報告されていない。

つまり、極めて事故の発生は少なく、重大な外傷や致命的な事故も非常に稀なのだ。これは競技会において、運営側の安全管理の仕組みが確立されているからだと言えるだろう。安全管理のための規則や推奨事項はAIDAなどで策定され、毎年見直しも行われている。セーフティダイバーを設置するのもその規則の一つだ。