おいしさを感動に昇華させたデザートのフルコース、1回6名までの完全予約制

今回目指すお店「Dessert&Wine 西洋茶屋 山本」は、2018年7月にオープンし、6年目を迎えるアシェットデセールの名店。

レトロな雰囲気を醸し出すビルの1階にあり、蔦で覆われた壁に貼られたターコイズブルーのタイルが印象的な外観。

明かり取りの窓

扉の向こうにある、もうひとつのカフェへの入り口

扉を開けると、中も一風変わった間取りになっていて、窓ごしに見える空間は2、3坪ほどの薄暗い小さな待合スペース。本棚にはドイツ菓子やフランス菓子、世界のワイン図鑑などのシェフの軌跡を思わせる本が並んでいます。そこからくるりと曲がる階段を数段上がってメインの空間へ。席に着くまでのアプローチにも気持ちが高まります。

店内の幅広いカウンターには6脚の椅子のみ。このカウンターが客席と厨房を分け、どちらの後ろにもゆったりとした空間がとられています。カウンター越しにおもてなしをしてくれるのが山本智弘シェフ。新時代の若き才能を発掘する、日本最大級の料理人コンペティションと銘打たれた「RED U-35」でSILVER EGGに選ばれた経験を持つ奇才です。

神戸からパティシエのキャリアをスタート。パリへ渡り、フランス菓子の現場で研鑽を積んだのち、日本の食文化について長い歴史を持つ京都へ。京都で開いた自身の店ではアシスタントを入れず、提供するすべてのデザートを素材の見極めから下ごしらえまですべて山本シェフが行います。だから全6席、1日3部制の完全予約制なのです。

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1皿目:京都の街中を走り回って集めた食材とフランス菓子の技法で作ったアミューズ

今回ご紹介するのは、「MENU・B」3520円のコースです。まず1皿目のアミューズは、塩味の小菓子。作家モノのガラスの皿に京都の老舗の漆器を重ねて。左から山梨県産マスカット・ベーリーAを使ったパート・ド・フリュイ。パート・ド・フリュイは、フランス語で「フルーツの生地」という意味を持つゼリー菓子。ワインの醸造家にも愛される黒ブドウの濃厚な酸味が広がります。

真ん中はケークサレ。こちらは「京つけもの 西利」の漬物を使用しています。この日はかぶらの漬物。内容は季節により変わります。奥はアーモンドのキャラメリゼ。京土産の定番として昔から愛される「七味家本舗」の七味が隠し味に。京都の街中を走り回って集めた季節の手仕事の食材をお菓子の素材に用いるのが「Dessert&Wine 西洋茶屋 山本」の特徴です。

アペリティフに合わせて提案していただいたのは、フランス・アンザス地方で“最も野心的なワイナリー”と評価される「Amelie & Charles Sparr(アメリー シャルル スパー)」のスパークリング。塩味の小菓子とアペリティフは物語への導入。これから続く甘い世界を味わい尽くすために、食べる人の舌を整える役目を担っています。