トヨタが斬新「手動」ブレーキ発表!? 進化しない「ブレーキペダル」が足踏み式から進化する時代は来るのか

クルマの「ブレーキ」といえばこれまで、足元のペダルで操作することが当たり前でしたが、ステアリング上でレバーを操作するコンセプトモデルが発表されるなど、新たな手法も紹介されています。ブレーキの進化について考えます。

「えっ…!」ハンドルでブレーキ操作!?

 トヨタは2023年10月21日、「ジャパンモビリティショー2023(JMS2023)」(10月26日から11月5日まで開催)に、アクセルやブレーキをハンドルに集約した「NEO Steer(ネオステア)」を出展すると発表しました。
 
 これまで足元で操作することが当たり前だった「ブレーキペダル」が、今後新たな進化を遂げるのでしょうか。

 当たり前のようにクルマに備わっている装備が、自動運転を見据えてここ数年で激変しています。

 そのようななかにあって、今も昔ながらの形を保ち続けている部品がブレーキペダルです。

 乗用車で使われるブレーキペダルは、アクセルペダルで一部に採用が広がっている「オルガン」タイプではなく、基本的には「吊り下げ」タイプが採用されています。

 ちなみに、大型トラックやバスなど「エアブレーキ」機構が使われている車両などでは、オルガン式のブレーキペダルが採用されている場合もありますが、乗用車では吊り下げタイプがほとんどです。

 乗用車のブレーキペダル形状の種類にも、2ペダル・AT車用で大きめな台形タイプと、3ペダル・MT車用で小ぶりな台形タイプの2つに分けられます。

 MT車の場合は、ブレーキペダルの左側にクラッチペダルがありますが、AT車の場合は足元にスペースがあるため、より確実にブレーキ操作をしやすくするために大きめの台形のタイプとなっています。

 なお、ハンドルのシャフトの位置が足元スペースへ影響する一部のモデルでは、MT車と同じような形状のブレーキペダルをAT車に採用している場合もあります。

 ブレーキペダルは、アクセルのように靴底を滑らせて使うことはなく、確実にグリップさせ、滑らないように設計されています。

 そのため、靴底が触れる部分がラバー状となっている場合が多いです。

 また、上級モデルやスポーツモデルの場合は、ペダル表面にアルミなどのメタル素材を採用し、靴底が触れる部分のみ丸や長方形のラバーが飛び出していて、意匠性とグリップ性を両立したペダルが採用されている場合もあります。

 加えてごく少数ですが、スポーツカーの一部では完全な金属削り出しで作られている場合もあります。

 なおアフターパーツとしては、交換タイプのアルミペダルが純正オプションとして設定されている場合や、純正ペダルの上に被せるタイプの社外品のペダルカバーもあります。

 ブレーキのタッチやグリップ性に不満がある場合や、足元をキラリとグレードアップしてカスタマイズしたい場合は、このようなパーツを装着する方法もあります。

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アクセルとブレーキの踏み間違い対策にも有効!?

 近年、クルマの機能の様々な自動化が進んでいます。

 例えば、これまで当たり前のように利用してきたシフトレバーも、昔ながらの形状から変わりつつあります。

 電子制御化されたことで、機械式のレバーに代わり、小さなシフトノブを備えた「電制シフト」タイプや、シフトスイッチなどを用いた「電動シフト」の採用車が増えてきているのです。

 また、パーキングブレーキも、手で引いたり足で踏んだりする機械式のタイプから、スイッチ操作や自動的に作動する電動式のタイプが、軽自動車まで普及してきています。

 しかしそれでもブレーキペダルについては、相変わらず昔ながらの形状を保っています。

 先進運転支援機能(ADAS)がいくら進化しても、クルマを確実に止めるためにはドライバー自身によるブレーキペダルの操作が欠かせません。

 確かに近年では高速道路の本線で、レーダーやカメラを使った全車速追従型アダプティブクルーズコントロール(ACC)を使用することで、ブレーキペダルを一切使わなかったことは、筆者(くるまのニュースライターHAMATARO)もたびたび経験しています。

 もちろん過信は禁物で、ブレーキペダルをいつでも踏める状況で運転していますが、ブレーキペダルの使用頻度が低下してきているのは確かです。

 一方で、近年懸念が高まっている、アクセルとブレーキの踏み間違え事故を減らす方法のひとつとしても、ペダル形状以外の選択肢に可能性が見いだせるかもしれません。

 従来から、下肢に障がいがある人向けの福祉車両には、手でブレーキ操作を行えるタイプがありますし、またオートバイはそもそも前輪のブレーキをハンドルに備わるレバーで操作するのが一般的です。

 このようにブレーキは、絶対に足元のペダルで操作しなければならない、というものではありません。

 そして冒頭で紹介した通り、トヨタはJMS2023でネオステアの提案をしています。

 操作ハンドルの周辺に、新たにアクセルとブレーキのレバーが備えられたのは、ステア・バイ・ワイヤを採用したことが大きな要因となっています。

 90度の小さな操舵角で軽くハンドルを切れるようになり、ハンドルから手を組み替えたりせずに済むようになったのです。

 福祉車両としての観点もあるようですが、トヨタではドライバーの足元にペダルがなくすっきりした空間となる点もメリットだとしており、乗降性の向上に加え、ドライビングポジションの自由度が高まるとしています。

 そしてこのネオステアは右の親指でアクセルを操作し、パドルシフトのような位置にあるブレーキレバーを、他の指で握る形状となっています。

 従来のペダルに対するリスクの差などは不明ですが、こうしたこれまでにない発想をもとにした新たな展開にも期待したいところです。