RX-8からいかに距離を取り、「人馬一体」でまとめるか

息吹ほどではないがフロントミッドシップ配置をさらに後退させたエンジン、傾斜させたラジエーターなど、オーバーハングの重量物を軽く収める工夫がNCでは追求された

もちろん観音開き4ドア・4シータークーペのRX-8と2シーター・オープンスポーツのロードスターでは全く別種のクルマですから、そのままで開発が続いていれば、ロードスターの歴史はそこで終わっていても不思議ではありません。

一応、2003年に発表された次期ロードスターのデザインスタディ的なコンセプトカー「息吹」で3ナンバーボディにならざるを得ない事は予告されていたものの、それ自体は厳しくなった衝突安全基準への対応もあり、仕方のないところです。

だからといって何もかもRX-8のお下がり、共用部品を使っていては安く楽しい「人馬一体」で仕上げるのは困難です。

同じフロント・ダブルウィッシュボーン / リア・マルチリンクのサスペンションでも軽いものを作ったり、2代目NBの1.8リッター車では外部から仕入れたものの不評だった6速MTも内製した結果、より低コスト化でフィーリングのいいものになりました。

さらにコストとバランスを取りつつ素材を厳選し、ホワイトボディでは2代目NBより軽いほど軽量化、ボディ四隅の角を徹底的に削った楕円状のオーバルシェイプ・デザインや、バッテリーをリアに移設するなど重量配分も最適化。

多少重量が増えるのは致し方ないとして、2リッターエンジンにしてもRX-8やS2000のようなパワフル志向は「人馬一体」に背くからと採用せず、あくまで必要な時に必要なだけのパワーを得るのに有利な170馬力程度、ドライバビリティ重視で進めました。

その結果、2代目NBより若干大きく重くなったとはいえ、剛性アップしたボディで足もよく動き、コントローラブルで楽しく走れるクルマに仕上がり、2005年8月に発売。

2006年8月には収納時フルオープンとなる電動ハードトップのRHT(リトラクタブル・ハードトップ)も追加し、厳しい社内事情や、時代の要請にも見事に応えてみせたのです。

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NBまでと見た目が大きく変わって困惑するも…

4代目NDのRF(リトラクタブルファストバック)と異なり、3代目NCでは完全フルオープンのRHT(リトラクタブルハードトップ)仕様も販売された

しかし、ただ大きく重くなっただけでなく、直線と四隅のカーブで構成されたオーバルシェイプ・デザインやフロントマスクも含め、初代NAや2代目NBとかなり見た目が異なる「ロードスター」に、従来のユーザーはちょっとどころでなくギョッとしたのは事実。

優雅なブリティッシュ・スポーツ風から、アメリカン・スポコン(スポーツコンパクト)風にも見えて、その先入観も手伝って新車発表時のメディアやユーザーからのインプレッションも、どうも思わしくありません。

実は筆者も「これがロードスター?」と発売当時に眉を潜めたクチなのですが、販売終了から数年経って、自身が主催するジムカーナイベントに出走したNCロードスターを見て、「あれ?こんなカッコいいクルマだっけか?」と首を傾げました。

どうもオーバル・シェイプというのは見る角度によってかなり印象が異なるようで、宣伝写真でよくある「正面」や「斜め前」からだとヌルっとして締まらない印象ですが、サイドや後ろから見ると、一本筋の通った清々しさすら感じさせます。

要するに姿カタチが違うものを無理やり重ねようとするのがイケナイのであって、NCはNCなりにカッコいいアングルやカスタマイズがあり、それに沿っていけば十分イケてるのですが、新車当時に感じた違和感をずっと引きずってしまったようです。