なんというデカさ…日本で竣工「世界最大級のコンテナ船」 デカすぎて日本に帰ってこれません!?

日本で造られた船としては空前絶後の大きさのコンテナ船「ONE INNOVATION」が竣工しました。あまりに大きすぎて、日本を離れれば戻ってくることが困難なほど。どのような役割を持つ船なのでしょうか。

日系唯一の国際コンテナ船社が投入する“世界最大級”

 日本の造船史上では空前絶後、世界でも最大級となるコンテナ船がついに完成です。2023年6月2日、「ONE INNOVATION」がジャパンマリンユナイテッド(JMU)呉事業所にて竣工しました。船体のサイズは「2万4000TEU型」。標準的な20フィートコンテナを約2万4000個積載できるという意味です。

 同船の運航を担うのは海運大手の川崎汽船、商船三井、日本郵船のコンテナ事業を統合したオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)。海上物流の大動脈で多くのメガコンテナ船が就航している中国~欧州航路に投入し、日系唯一の国際コンテナ船社として競争力の強化を図ります。

 ONE広報の木幡龍太さんは「ONEはより大きな船を作ることで、これからの競争を生き残っていくことができる」と話します。

戦艦大和が子供に見えるサイズ!?

 同社は2020年12月24日に船主である正栄汽船と超大型コンテナ船の長期用船契約を締結し、JMUと今治造船で2万4000TEU型を計6隻、建造することが決まりました。ヤードはJMU呉事業所が2隻、今治造船の丸亀事業本部が2隻、同西条工場が2隻となっています。

 今回、デビューした「ONE INNOVATION」は、その時に建造が決まった1隻で、ONEが初めて新造整備する2万4000TEU型コンテナ船の栄えある1番船に当たります。

 具体的な積載能力は、20フィートコンテナ換算で2万4136個に上ります。全長399.95m、全幅61.40mというサイズは戦艦「大和」(全長263m、全幅38.9m)をはるかに超え、東京タワー(高さ333m)や東京駅丸の内駅舎(長さ335m)といった建築物が比較対象になるほど。エアドラフト(水面からマストの一番上までの高さ)は、20階建てのビルに相当する73.5mにもなります。

 ちなみに、JMU呉事業所には空母化改修工事を行っている護衛艦「かが」(全長248m、全幅38m)も接岸していましたが、マゼンタカラーをまとった「ONE INNOVATION」と隣り合っていると、海上自衛隊最大の艦艇も小さく感じてしまいます。

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コンテナ積んだらまさに海を行く“壁”

「ONE INNOVATION」コンテナ船としての性能を見ていきましょう。デッキに積めるコンテナのスペースは24列を確保。ホールド内(船内)は12段積み、オンデッキ(デッキ上)は最大13段積みとなっています。コンテナを満載したその姿は、まさに海を行く巨大な“壁”となることでしょう。

 船内には、冷凍・冷蔵貨物の輸送に使用されるリーファーコンテナの電源プラグが2000TEU分以上用意されており、コンテナ内に窒素を充満させて青果物の鮮度を保持したまま海上輸送が可能なCAコンテナにも対応。顧客のニーズに沿ったサービスをより柔軟に提供できるようになります。

 また、船体には固定式陸電供給システムが搭載されており、接岸時には発電機の使用を抑え、陸上電源から供給を受けることによって、港内でのCO2(二酸化炭素)排出量を抑制します。

「ONE INNOVATION」が持つ外観上の特徴としてマゼンタの船体があげられますが、船首にも「ONE」と大きく社名が書かれた構造物が備えられています。これは「ウインドシールド」と呼ばれるもので、船首側からコンテナのホールドに向かってくる風圧の抵抗を減らし、燃料消費を低減する役割をもっています。

 バルバスバウ(球状船首)の形も工夫し、効率良く航行できるようになっているほか、船尾も形状を見直し、舵がプロペラによって得られる推進力の邪魔にならないような配置になっています。もちろん近年の環境規制にも対応しており、たとえばSOx(硫黄酸化物)を回収するスクラバーなどの装置も搭載しています。

日本よさらば! もう戻ってこないよ!?

「投入されるのは主に寧波(ニンポー)、厦門(アモイ)、シンガポールと、ロッテルダムやハンブルグ、アントワープを結ぶ航路で、アジアとヨーロッパを往復し貨物を輸送します。他社も2万TEUを超えるコンテナ船を整備するなか、当社も対応する必要がありました」(ONE木幡さん)

 このように造船技術の粋を集めて建造された「ONE INNOVATION」ですが、その巨大さゆえ、世界的にも入れる港が限られ、中国~欧州航路へ就航するため日本を離れれば戻ってくることが困難です。今回の竣工・引き渡しが、日本で見ることが出来る最後のタイミングになります。

 とはいえ、2万4000TEU型コンテナ船はこれからも建造されるので、ぜひその姿に注目してみてはいかがでしょうか。