交通系IC拡大ムリ!自動改札も不要! JR四国スタイルの“スマホで乗って”大作戦は成功するか

JR四国がスマホアプリを通じた鉄道利用の拡大を推進。普通乗車券はもちろん、窓口などしか買えなかったきっぷもスマホで購入可能にしました。設備投資が莫大な交通系ICカードではない、地方の事情に合ったデジタル化が本格化しています。

苦渋の選択から生まれたチケットアプリ「スマえき」とは?

 JR四国は、チケットアプリ「しこくスマートえきちゃん(スマえき)」で購入できる切符の対象を大幅に拡大。従来はお得な割引きっぷに限定されていましたが、2023年4月1日から、普通乗車券や定期券、自由席特急券などに広げました。

 乗客からの評判も上々のようですが、他のエリアで生活をしている方の中には、「交通系ICカードでいいんじゃないの?」「そもそも、きっぷなんて買わなくていいんじゃないの?」と思われた方もいるかもしれません。

 実は、JR四国で交通系ICカード(ICOCA)に対応済みの駅は、全体の1割にも満たない20駅しかなく、莫大な設備投資を考え当面、ICカードの拡大は見送られています。そのため、ほとんどの利用者は紙のきっぷしか使えませんでした。そこで登場したのがチケットアプリの「スマえき」です。

 どのようなアプリなのでしょうか。JR四国は次のように説明します。

「発券を伴わずアプリに表示する券面でスマートにご利用いただけるのがスマえきの特長のひとつです。他社サービスでは、アプリやWEBで購入ができても、窓口や券売機での発券を伴うものが多いです」

「さらに自動改札機は高松駅、高知駅のみ(高知はICカード非対応)という当社の環境に合わせ、専用の読取り機器などを必要としない『目視改札』を前提とすることで、比較的軽微な導入・維持コストを実現するとともに、お客様はもちろん、係員が区間や券種を容易に判別可能な券面デザインを採用しています」

 いつでもどこでもキャッシュレスできっぷを購入できるうえ、利用時はきっぷ画面を見せるだけ。窓口や券売機に立ち寄る必要もなく、すべて手持ちのスマホで完結するのが最大の特長だそう。「おトクなきっぷなど特別企画乗車券は、窓口や一部の券売機でのみ販売していましたが、スマえきを使うことで、無人駅などからも利用できるようになりました。四国島外の方からも、便利になったというご意見が多いです」(JR四国)とのことでした。

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改札で“ピッ”は無し そもそも自動改札ほぼ無し

 JR四国は、アプリ利用の拡大とともに、「紙のきっぷ減らしていくことが将来にわたっての課題だと認識している」と話します。

「JR他社に跨るきっぷなどは、これまで通り磁気券での発券が必要であることから、たちまち紙のきっぷが無くなることはありません。一方で、自動改札もほとんどない当社の場合、金額式のきっぷでは、その金額しか把握できません。スマえきの場合、どの駅からどの駅まで乗車したか、おおよその使用開始と終了時間や、乗車券をいつ購入したかなどもわかります。より確度の高いご利用実態を把握し、需要に応じた営業施策展開に役立てるためにも、スマえきの利用率を高めていきたいと考えています」

 スマえきは事前に乗車券を購入するため、交通系ICカードのように、(区間を気にせず)とにかくピッと改札へ入って列車を利用することはできません。「四国外へ跨がるご利用や、事前にきっぷの購入が不要(降車時精算)な点は IC カードが優位であり、今後もスマえきと IC カードは、お客様が鉄道を便利にご利用いただくための“選択肢”として、うまく棲み分けながら、多様なニーズや施策に対応していくものと考えています」とのこと。

 とはいえ、スマえきは乗車券、自由席特急券、定期券、特別企画乗車券まで様々な券種に対応するとともに、専用の読取り機器も不要という観点で、「当社の環境下に即している」ということです。

 交通各社は人手不足が共通の課題となっており、有人窓口の削減やワンマン運転の拡大といった省人化を進めています。そうしたなかで、アプリにより利用者の利便性を高め、同時に発券業務などの自動化、ひいては省人化につなげる構え。JR四国はスマえきの利用率を7割に高めることを目標にしています。