現在も売れ筋ジャンルのひとつである「ミニバン」が市民権を得たのは、それまでの1BOX商用車ベースから、乗用車ベースで2BOXスタイル、1BOX車より低いとはいえ、ステーションワゴンの背を高くして3列シート仕様にしたようなロールーフミニバンからでした。
当時の主力ジャンルだったセダンと同じような感覚で乗れて、人や荷物をより多く載せられる便利な新ジャンルの原型は1980年代に登場、大ヒットとまではいかなかったものの、1990年代のRVブームでミニバンもヒットする下地を作ったのです。
日産 プレーリー(初代・1982年)
技術的には未熟だったものの、志は高かった近代ミニバンの原型
FF乗用車をベースに3列シート8人分が乗車する十分なスペースを持つキャビンを設けた、近代的国産ミニバン第1号として発売された初代プレーリー。
単に背が高く広いキャビンを設けただけでなく、Bピラーレスの両側後席スライドドアや、リヤバンパーごと大きく開くテールゲートなど広大な開口部という特徴があり、内容だけ見れば1990年代以降の近代ミニバンやトールワゴンとなんら変わりはない画期的な車です。
ただし、当時の技術では広大な開口部とボディ剛性の両立が難しく、テールゲート開口部をバンパー上端からへ改めるなど改善策を採ったものの、併せて行われた補強によって、ただでさえ出力不足なエンジンのアンダーパワー感が目立ちました。
「志の高さに技術が追いつかなかった」好例で、商用車じみた凡庸なデザインもあって販売は伸び悩んだものの、1980年代前半にこれだけのコンセプトをまとめていたのには驚かされます。
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三菱 シャリオ(初代・1983年)
三菱らしく4WDターボもラインナップした、元祖スポーツミニバン
「乗用車ベースのミニバン」という発想自体は1970年代後半の東京モーターショーで実用間近のショーモデルが登場しており、1979年にSSW(スーパースペースワゴン)を発表、反響の高さから初代シャリオの市販にこぎつけた三菱も、早くから目をつけたクチ。
ショーモデルはモックアップだったので、市販型までに4年かかって初代プレーリーに国産第1号の座は譲ったものの、後席に通常のヒンジドアを採用するなど堅実な構造で問題は少なく、4WDやディーゼル車を次々に追加する余地がありました。
特筆すべきは発売5ヶ月後に追加された1.8リッターのガソリンターボ車で、まだAT全盛となる前のモデルですから、3速ATのほか当然のように5速MTも用意、後にロールーフミニバンがハイルーフ車に対して売りにした、スポーツ性を先取りしたモデルです。