全国各地の沿岸に多く見られるクロダイは、関西では「チヌ」と呼ばれていることを釣りファンのみなさんならよく知っていることでしょう。古くから利用価値の高い魚のなかにはこのようにたくさんの地方名を持っている魚が多いのですが、それだけ庶民にとって身近な存在であることから、釣りの対象魚としても人気の高いことが伺えます。
そんな人気のクロダイをねらって、いろいろな釣り方が確立されていますが、それぞれに奥の深い楽しみ方があります。

そのなかから今回は、身近な釣り場で好釣果を望むことができる「ウキ釣り」についてお届けしましょう。






クロダイをねらうには?
そして、そのコツとは?

クロダイのウキ釣りは大別して2通りあります。一つはマキエをダンゴ状に丸めてその中にサシエを包む「ダンゴ釣り」。地方によっては「紀州釣り」あるいは「紀州釣りスタイル」など、別の呼び方もあります。もう一つは「ウキフカセ釣り」あるいは単に「ウキ釣り」と呼ばれる釣り方で、今回紹介させていただく釣り方です。(ここでは以下「ウキ釣り」と表記させていただきます)

ウキが沈む瞬間のドキドキがたまらない「ウキ釣り」

このほかにクロダイを釣る方法としてはルアー釣り(チニング)や落とし込み釣りなどがあり、これらは装備が手軽で、食い気のあるクロダイがいればすぐに釣果を得ることができます。しかしながら手軽に行ける都市近郊の釣り場ともなると、連日、そこにいる釣り人に朝から晩まで攻められてしまうため、これらのエサや仕掛を見切ってしまう(=スレてしまう)ようになります。
そうしたことから、釣果を上げるコツはこまめに場所を移動することと、しばらくの間ほかの釣り人が攻めていないポイントをねらうことです。そのためには、よりポイントに精通していることがアドバンテージになるのです。

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ウキ釣りでは「マキエ」が重要
その効力とは?

さて、クロダイをウキ釣りで効率よく釣るためには「マキエ」を用意する必要があります。マキエを用意するには相応の手間がかかるうえ、投入したあともマキエの成分が海中に拡散して効果が現れるまで時間を要するというデメリットがあります。しかし、クロダイは大変嗅覚が発達している魚なので、効率よくマキエを投入することにより近くにいるクロダイを自分の仕掛の周囲に集めることができるのです。
集魚効果という意味で、マキエはひじょうに重要なアイテムなのです。



ちなみにクロダイが好む「アラニン」というアミノ酸の一種は、エビやカニなどの甲殻類にも多く含まれています。このアラニンは10-8乗モルというとてつもなく希薄な濃度に薄めても反応する魚種があるといわれています。
アラニンの1モルというのは1Lの水に約90gを溶解させた状態を指しています。したがって、10-8乗モルというのはそれを1億Lの水で薄めたものです。数字が大きいので表現を変えると100m四方、深さ10mの水に90gのアラニンを溶解させた状態を指しているのです。






マキエによって食い気が高まったクロダイは警戒心が薄れて(条件にもよりますが)、ハリやハリスが付いたサシエに連続して食ってくるようになります。