もう出荷!? 韓国からポーランドへ輸出の戦車&自走砲 契約からたった3か月でなぜ可能?

2022年夏に韓国兵器を爆買いし話題となったポーランド。その最初の引き渡し分が早くも韓国メーカーから出荷されました。K2戦車とK9自走砲はなぜそんなに早く用意できたのか、そこには国を挙げての対応がありました。

契約締結からわずか3か月でのスピード出荷

 2022年10月19日、韓国からポーランドへ向けて2種類の戦闘車両が出荷されました。ひとつはヒュンダイ・ロテム社のK2主力戦車10両、もうひとつはハンファ・ディフェンス社のK9自走155mm榴弾砲24両です。これらは今年(2022年)7月に契約が締結されたばかりのもので、新品の戦車と自走砲がわずか3か月弱という短期間で出荷にこぎつけたことは驚きを隠せません。

 なぜここまで早く韓国メーカーは対応できたのか。もちろん、戦車や自走砲を短期間でゼロから製造することはできません。実は、ヒュンダイ・ロテム社は自国軍向けの生産分から今回の10両を転用。ハンファ・ディフェンス社も同様の対応をすることで今年中に計48両を輸出するとしています。

 なお、両車の輸出はその後も続く計画で、K2戦車は2025年までに計180両、K9自走砲は2026年までに212両が出荷される予定です。さらに、それらと別にポーランド仕様に改良されたK2PLとK9PLの生産も決まっており、一部車体はポーランド国内でライセンス生産されることが決まっています。

 両車の性能を簡単に記すと、K2戦車は主砲に120mm滑腔砲を装備し、最新のセンサーや電子機器、他の車両やプラットフォームとの連携を行うC4Iデータリンク装置も搭載しています。K9自走砲は155mm榴弾砲を装備しており、最大射程は約40km。半自動給弾システムにより最大で毎分6~8発の射撃が可能で、バースト射撃という短時間で集中的に多数の弾を撃ち出すやり方では、15秒間に3発の砲弾を連続射撃してそれらを同時に弾着させることも可能だといいます。

 ちなみに、K9自走砲は、すでにポーランドを含めた8か国で採用されており、完成車の輸出だけでなく現地でのライセンス生産も行われています。K2戦車は今回のポーランドへの輸出が初の外国軍への引き渡しとなりますが、その性能は、すでにポーランドが運用しているドイツ製のレオパルト2A5戦車などに引けを取らないといわれています。

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ポーランドが韓国製兵器の大量調達に走ったワケ

 ポーランド軍は今年(2022年)2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻によって、自国の軍備増強を驚異的なペースと規模で進めています。同国はNATO(北大西洋条約機構)加盟国であるため、今回の侵略に関してロシアとは対立関係にあります。

 そのようななか、ロシアとは地続きで距離的に近く、加えて現在ロシアと戦闘中のウクライナや、今回の侵攻ではロシア寄りのスタンスにあるベラルーシとは国境を接しているため、侵略の脅威に対して、ほかのヨーロッパ諸国よりも対岸の火事とは考えられない距離にあるのです。

 歴史的にも、ポーランドは近隣諸国の干渉によって国土が分割されたり、侵略を受けたりしてきた経緯があり、とくに第2次世界大戦でドイツや旧ソ連(現ロシア)によって占領された経験から、今回のロシアによるウクライナ侵攻は他人事とは思えないのかもしれません。

 なお、ウクライナを支援するためにポーランドは自軍の旧ソ連(ロシア)製兵器を同国に供与しており、報道によればその内訳は戦車200両以上を含んだ大規模なものだとか。それにより、自国兵器の量が少なくなるという空白状態に陥ったことも今回の韓国製兵器の大量調達に結び付いているといえます。

 このような状況から韓国の防衛産業は、超特急でポーランドの要求に応じたのです。もちろん、自国生産分の転用を許可した軍と政府の協力も不可欠でした。