JAL初の新造エアバス機A350は着陸減速時がスゴイ! 搭載された新機能とは? パイロットに聞く

JALが初めて新造導入したエアバスの旅客機「A350-900」。この機に備わる様々な新機能のなかでも特筆すべきが「BTV」です。どのような機能なのか、現役のパイロットに聞きました。

多くの機種に「オートブレーキ」はあるが…

 JAL(日本航空)が2019年に運航を開始した次世代主力機「エアバスA350-900」。2022年現在16機が国内線で運航しています。このA350-900は同社として初めて新造導入するエアバス機で、これまで使用されてきた旅客機とは、コックピットにもざまざまな違いや進化があるとか。そのうちの代表的なものひとつが、「BTV(Brake to Vacate)」とよばれる自動ブレーキ機能です。

 今回、その先進的な機能について、JALでA350の機長を務める仲本大介さんに話を聞くことができました。

 仲本機長は、フランスから日本へのA350初号機のデリバリーフライト(納入のための回送便)を担当するなどの経歴を持っています。A350担当前は、ボーイング737の機長を務めていたそうです。

 仲本機長によると、一般的な旅客機にもオートブレーキは備わっており、滑走路での減速に利用されていますが、その多くは、一定の減速率でブレーキをかけ続けてくれる、といった機能にとどまるそうです。

 一方で、エアバスA350-900に搭載されている「BTV」は、着陸後に滑走路から離脱する誘導路を選択すると、そのポイントで安全に離脱できる速度(約20km/h)になるように自動で減速してくれるのだそうです。データがある空港ならば、滑走路と誘導路を選択するだけで、あとは自動で止まってくれるわけです。

「通常、着陸したあとに200km/h程度の高速で走りながら減速していきますが、その間に離脱する誘導路がどこかチェックしなければいけません。BTVを用いると、誘導路へ機械的に向かっていってくれるので、離脱する誘導路の”勘違い”を防げます。また、追い風のときや路面状態が悪いときなどは指定したところでは止まれないよ、といった情報も教えてくれるので、パイロットとしては計画していた誘導路から離脱できないときのプランを切り替えやすくなりますね」(仲本機長)

 このBTV、パイロットの負担を軽減するほかにも、メリットがあります。

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「BTV」が効力を発揮するシチュエーションとは?

 仲本機長によると、着陸する空港によっては、はるか先の誘導路まで走ってから離脱するケースもあるそうです。たとえば那覇空港の海側にあるB滑走路に南側から進入するケースでは、滑走路を走り続け、一番北側の誘導路で離脱し、橋を渡ってターミナルへ行かなければいけないのだとか。

 BTVは、こういったときにも効力を発揮します。

「先述のケースでは、最初からブレーキを踏んでしまうと、途中からゆっくり走ることになりますので、滑走路を使う時間が長くなります。BTVでは、最初はブレーキをかけずにできるだけ早く離脱予定の誘導路付近まで進み、途中から計算された状態で、不快に感じないレベルのブレーキをかけ、離脱ポイントへ到達します。そうすることで滑走路を占有する時間をできるだけ短くすることができます。管制官など空港を運用する側にとっても、良い機能といえるかもしれません」(仲本機長)

 なお同氏によると、BTVには、着陸する滑走路の占有時間を秒単位で表示してくれる機能も備わっているとのことです。

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 JALが導入したエアバスA350-900、操縦席から見た進化や、これまで同社が用いてきたボーイング機との差は、もちろんこれだけには留まりません。「A350は、現在国内線でしか運航していないので、まだまだお話しきれていない機能もあるかもしれません。長距離を飛ぶようになれば、もっと活用できる機能があるはずです。2023年からA350は、胴体延長タイプのA350-1000が長距離国際線も飛ぶことになりますので、それを楽しみにしていきたいです」(仲本機長)。