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UNISON SQUARE GARDEN、パワフルに10年前の“最高”を更新 『Catcher In The Spy』リバイバルツアーを観て

Real Sound

UNISON SQUARE GARDEN(写真=Viola Kam (V’z Twinkle))

 “懐かしさ”や“エモさ”ばかりに傾倒するのではなく、今日もいつも通り、全力で、最高の音楽を届けるロックバンド――4月25日、渋谷・NHKホールで行なわれたUNISON SQUARE GARDENの『Revival Tour “Catcher In The Spy”』を見て、改めてそう感じた。同ツアーは10年前に行なわれたツアー『TOUR 2014 “Catcher In The Spy”』を再現するという趣旨のライブ。これまでも『Revival Tour “Spring Spring Spring”』、『Revival Tour“CIDER ROAD”』とリバイバルツアーを行なってきたが、いずれの公演もそうであった。「たしかにこんなセットリストだった!」、「そんな煽りをしていた気がする!」など、当時の記憶を引き出すことはあっても、ノスタルジックな気分に包まれることはない。それは彼らが当時最高だったものを今の彼らで更新していて「今日のユニゾンが最高」と思わせてくれるからだ。さらに、年に3、4本ツアーを行うというすさまじいペースのライブを通して、新旧問わず彼らの音楽を常に楽しむことができているからなのだろう。そして、この日も彼らは最高のライブを見せてくれた。

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 いつも通り鈴木貴雄(Dr)、田淵智也(Ba)、斎藤宏介(Vo/Gt)の順でステージに登場すると、大きな歓声と拍手が巻き起こる。タイトルを可視化したようなオレンジの照明にステージが包まれると「黄昏インザスパイ」がスタートし、斎藤のギターと歌声が響き渡る。同曲は1サビ終わりで田淵と鈴木が加わる構成のためそれぞれが奏でる音が非常にわかりやすい。「これがユニゾンの音だ」と示したところで鈴木がジャケットを投げ捨て、「サイレンインザスパイ」へ。2サビ前、斎藤の「こんばんは、東京!」という呼びかけがリバイバルされていて、ここで沸いた人も多いはずだ。鈴木にスポットが当たるとお馴染みのフィルが聞こえ、「オリオンをなぞる」。途中、鈴木のもとに斎藤と田淵が集まり、3人で楽しそうに演奏している姿にはもはや新鮮味すらあった。

 普段、彼らのライブで発される言葉はごく僅かだ。しかしこの日はリバイバルツアーならではのMCも行なわれた。「こんばんは、UNISON SQUARE GARDENです」と斎藤が挨拶をすると、一斉に拍手が。鳴り止む気配のない拍手を噛み締め、斎藤が満足げに頷くとさらに拍手が大きくなっていく。やっと鳴り止んだところで「マイケル・ジャクソンくらい続くかなと思ったんですけど……」とポツリ。

 その後の「最後まで自由に楽しんでいってください。よろしく!」という言葉を合図に、ライブが再開。「流れ星を撃ち落せ」で気合いの入った演奏を見せて、「箱庭ロック・ショー」で客席を踊らせる……というところで田淵のベースの調子が悪くなってしまうハプニングが。しかし、すぐに替えのベースに持ち替えて何事もなかったように踊り狂っていく。冷静な田淵のプレイはもちろん、その間一切の動揺もなく演奏し続けた斎藤と鈴木、3人のプロフェッショナルな対応力は実に見事だった。

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 続く「to the CIDER ROAD」でさらに大暴れしたところで暗転。「君が大人になってしまう前に」で少々クールダウン、間髪入れずに「メカトル時空探検隊」で〈全人類に愛とチョコレートを!〉と会場全体が叫び、「何かが変わりそう」でさらにエンジンを温めていく、という流れがとにかく秀逸だ。いつだって彼らのセットリストは美しい。そのような流れに惚れ惚れしていると、鈴木のドラム、田淵のベース、斎藤のギターが重なりながらセッションが始まり、「シャンデリア・ワルツ」へと繋がっていく。鈴木がサビでスティックを回したり、斎藤と田淵が向かい合って演奏したり、ラストの掻き回しを長めに取ったり。彼らは言葉で煽ったりはしないが、“盛り上がりポイント”をしっかりとおさえている優しいロックバンドなのだ。

 大盛り上がりの中暗転したところで、再びクールダウンタイム……ではない。「蒙昧termination」、「WINDOW開ける」と重めのサウンドをクールにブチかましていく。サウンドと照明のリンクも素晴らしく、3人の演奏をさらに際立たせていた。そして「シューゲイザースピーカー」へ。一瞬、斎藤の姿が10年前の姿に見えた気がしたが、それは10年の時を経てもなおギラギラした空気と勢い、パワフルさが損なわれていないということなのだろう。

 またもや貴重なMCタイム。ここまでのあまりのカロリーの高さに、「恐るべし、10年前の自分たち」と斎藤が漏らしつつ、当時を振り返る。10年前のツアーでは中野サンプラザと新木場STUDIO COASTで行なったが、いずれの会場も現在は閉館済み。「『全部ない!』ってエモい気持ちになった」と笑いを誘った。さらに「歳を重ねるごとに10年好きなものが変わらないってすごいかっこいいことだなと思っていて。それがましてや1個のバンドで、ライブに行くほど好きだって、同じ音楽好きとしてリスペクトします」と感謝を伝えた。そんなMC後に披露されたのは「harmonized finale」。MCの内容からの〈君を追いかけるよ 多分死ぬまで〉は、これまでユニゾンを応援してきて、これからも応援していこうと思っているファンの気持ちとも重なり、思わずグッときてしまう。それに続いたのは、鈴木の熱いドラムソロ。いわずもがなの超絶技巧に演奏中は圧倒されて声が出ないほどである。この日も、ドラムセットの上に倒れ込むようにして演奏を終えると大歓声と拍手が会場に響き渡った。

 ここからはラストスパート。セッションを経てイントロ、斎藤の「天国と地獄!」というタイトルコール、歌……という流れも至極である。ここでテンションが上がらない人はいない、とすら思えてくる。そのまま演奏を途切れさせることなく「カラクリカルカレ」、「桜のあと(all quartets lead to the?)」とノンストップで駆け抜けていく。そして「東京、またね!」と告げて「crazy birthday」。ステージを縦横無尽に動き回り、コーラスに間に合うようにマイクにダッシュしている田淵は、翌日が誕生日。ブリッジ部分、客席からの〈happy birthday〉という声は彼へのお祝いになったはずだ。「最後はこの曲!」という振りで始まったラストナンバーは「場違いハミングバード」。アウトロで歓声を浴びる斎藤、パッションを出し切るかのごとく暴れまわる田淵、テクニックだけでなく表情でも魅せる鈴木。最後の最後までUNISON SQUARE GARDENらしいライブを見せてくれた。

 もちろん、客席からはアンコールが巻き起こる。その声を聞いてすぐさまステージに戻ってくる3人。この無駄のなさにも痺れる。全身全霊を出し切った本編終了後の3人からは疲労感も漂っていたが、「instant EGOIST」でアンコールが始まる。ブリッジで「23:25」の一節が入る部分では、演奏の途中で動きを止めて“ストップモーション”。鈴木はドラムに倒れ込み、斎藤はドラム台の上でギターを弾く形、田淵は両足を広げて仰け反るポーズでたっぷり止まると、再び演奏をスタートさせて観客のボルテージはマックスに。さらに「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」で大暴れ。田淵はマイクを床に置き、寝転びながら演奏とコーラスをして会場を沸かせた。ラストは「23:25」。会場も明転し、メンバーも観客も晴れやかな笑顔でユニゾンの音を楽しみ、ライブに幕を下ろした。

 20周年の結成日、7月24日にはバンド初のベストアルバムのリリース、同日に日本武道館のライブ、さらに9月からはベストアルバムを携えた全国ツアーが大阪城ホールより開催される彼ら。今が最高で最強。いつだってそう思わせてくれるUNISON SQUARE GARDENというロックバンドは、まだまだ多くの人を魅了していく。

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