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勝利掴んだマクラーレン、新パッケージ投入の目的は“ピュアな”ダウンフォース量向上にアリ。次戦イモラで真価が問われる?

motorsport.com 日本版

勝利掴んだマクラーレン、新パッケージ投入の目的は“ピュアな”ダウンフォース量向上にアリ。次戦イモラで真価が問われる?(C)motorsport.com 日本版
 マクラーレンがマイアミGPに持ち込むアップデートパッケージの規模が発表された時、それが野心的なステップであることは明らかだった。

 FIAに提出された公式資料で発表されたように、マクラーレンはランド・ノリスのマシンに10個の新パーツを投入した。ただ、その多くは空力的なアップデートではなかった。

 マクラーレンは事前に、今回のアップデートが低速域でMCL38が抱える弱点に対処するための改良であることを予告しており、これら新パーツ投入の動機は明らかだった。“ピュアな”ダウンフォース量向上だ。

 一言でダウンフォースと言っても、F1では全てが同じではない。可能な限り空力効率が良い(ドラッグが少ない)手段でダウンフォースを発生させることが成功の鍵となる。

 どのような見方をするかにもよるが、空力効率とは、設定されたウイング角度に対してドラッグが大きすぎるか、ダウンフォースが小さすぎるかということだ。コーナリングを速くするために、大量の“ダーティな”ダウンフォースを発生させる巨大リヤウイングを持ち込むのは簡単だが、それでマシンのストレートスピードが落ちてしまっては意味がない。

 マクラーレンがマイアミGPで投入したアップデートを理解する上で重要なのは、一見すると二者択一のように見えるふたつの要素を高次元で両立させようとしたこと。つまり、クリーンなダウンフォースを増やすことでコーナリング性能を高め、ウイングへの依存度を減らしてストレートスピードを向上しようとしたのだ。成功すればまさに一挙両得だ。

 マクラーレンのアンドレア・ステラ代表が説明したように、今回の改良の焦点はドラッグを増やさない効率的なダウンフォースを稼ぐことにあった。
 マクラーレンはこれまでストレート区間でライバルからやや離されることが多かったが、現在はライバルに対して競争力を増しているということは見逃せない。

「ここではトップスピードが良かった」とステラ代表は説明する。

「その理由のひとつは、意図的に比較的軽い(ドラッグが少ない)リヤウイングにしたことだ」

「パッケージ全体からダウンフォースを増やすことができたから、空力の観点から決して効率的とは言えないリヤウイングの負担を減らすことができた。だから軽いリヤウイングを装着できたのだ」

「フロアやサイドポンツーンのアップデートをマシンに投入する場合、リヤウイングでダウンフォースを引き出すよりも効率的だ」

 新パッケージの全体的な効果は、セットアップで低速域にMCL38を最適化することで引き立てられた。

「我々は意識的に、低速域でのパフォーマンスを最大化するようなセットアップに決めた」とステラ代表は説明する。

「低速域でのパフォーマンスが良かったのは、必ずしもパッケージの特性に寄るモノではなく、低速域で可能な限り強くなるよう意識してセットアップしたからだ」

「予選を見ると、高速セクションでかなりタイムを失っていたが、これは意図的なセットアップ選択によるモノだ」

 そしてマイアミGPでのマクラーレンのアップデートは始まりに過ぎず、まだまだこれから新しいパーツがやってくる。ステラ代表は投入を控えているアップデートは、低速域でチームが抱える問題をさらに解決するのに役立つという。

 マイアミでのアップデートによって、この分野での弱点がどの程度解消されたのかと訊かれたステラ代表は次のように答えた。

「期待していたほどではない。特に低速域に対処するため、もっと具体的な作業やアップデートが必要だ」

 タイミング良く入ったセーフティカーがノリスのF1初優勝へと導く前から、新パッケージのポテンシャルは明らかだった。

 スプリント予選での“とっ散らかった”ラップやスプリントレースでの不運なリタイアなど、そのポテンシャルは発揮されていなかったが、決勝で一度前が開けると、ノリスは飛ぶような速さを見せた。

 レース後、ノリスは次のように説明した。

「金曜日に既に言ったけど、感触は良かった。金曜日は自信があったし、日曜日もその感覚が戻ってきた。良いことだよね」

「最近、日曜日は好調だった。今回はそれをさらにステップアップさせることができた」

 しかし、このアップデートがマクラーレンにとって、最強レッドブルを脅かす真の脅威となる兆候なのか、それとも単にマイアミの幸運がノリスに勝利をもたらしただけなのか、次戦エミリア・ロマーニャGPで見極めることが重要だ。

 ノリスに敗れたフェルスタッペンは、セーフティカーがなければ勝てたかと思うかという質問に対して次のように語った。

「常にタラレバになるだろう? もし僕のママに“ボール”があれば、僕のパパになっていただろうね」

「そう、レースとはそういうモノなんだ。上手くいく時もあれば、そうでない時もある」

 マクラーレンの次なる仕事は、“上手くいく時”を増やすことだ。
 
   

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