アニメタイアップで話題を集めるミセスの青春ソングに注目!
▲Mrs. GREEN APPLE-ライラック【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
ミセスの愛称で親しまれる人気バンドMrs. GREEN APPLEの『ライラック』は、2024年4月よりテレ東ほかにて放送のTVアニメ『忘却バッテリー』のオープニング主題歌に起用されています。
『忘却バッテリー』の原作は、集英社の「少年ジャンプ+」で連載中のみかわ絵子による同名漫画。
記憶喪失の主人公という設定と高校野球のリアルな部分を描いた描写が注目され、同アプリ内での累計閲覧数が2億超えという人気を誇る作品です。
そのオープニングを飾る楽曲のタイトルにもなっているライラックの花言葉は、「友情」「謙虚」「青春の思い出」と人間関係に関わる魅力的なものばかりです。
作詞作曲を務める大森元貴はタイアップのオファーを受け、眩しい青春の裏に必ずある「疎ましい青春」についてまず考えたそうです。
青春と聞くと友人との眩しく輝くような記憶を思い浮かべがちですが、その中には少なからず思い出したくない記憶も混じっているはずです。
そうした複雑な青春時代をどのように描いているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
1番では楽しい時間にも限りがあることを示しています。
特に学生として青春を謳歌できる期間は人生のごくわずかで、「今日」という楽しい一日を迎えるということは同時に終わりが近づいている証拠です。
どんなに大切にしていたものでも、時間の経過と共に棚の奥にしまわれて忘れられ、埃を被ってしまうものです。
しかし、ふと見つけて取り出した時にはそれに対する愛着を再び思い出すでしょう。
同じように尊い「思い出の宝庫」も心の中で蓄積していつの間にか忘れてしまいますが、振り返った時には当時の「誇りが光って見える」のではないでしょうか?
この歌詞から、成長することに付きまとう切なさや未来への想いが垣間見える気がします。
楽しい青春時代を過ごしていても、いつも幸せとは限りません。
将来への「不安」、周囲からの「喝采」、学生として求められる「連帯」に思い悩み、心が濁ったり眩暈がしそうになることもあるはずです。
そんな感情の揺れにより倦怠感を覚えながら、通学のために立った「三番ホーム」で「準急電車」を待っています。
サビの「青」は青春を意味し、その時代の澄み切った爽やかさと青臭さを表現していると思われます。
そして、鮮やかな空の青とライラックの紫色のコントラストが美しい春の景色を想像できるでしょう。
そこで誰を待っているのかは分かりませんが、「ここでね」と強調していることからライラックの花言葉が示すように大切な友人を待っていると解釈できます。
誰しも、人生の中でいくつもの傷を負い苦悩することがあります。
それでもその傷すら「愛おしく思いたい」という言葉に、将来に対する期待や前向きな気持ちが感じられますね。
毎日忙しく生きていて、大切なことでさえ忘れてしまうのが人間です。
「何を経て 何を得て 大人になってゆくんだろう」という疑問の答えは、大人になっても明確に出せないかもしれません。
しかし、模索しながら目の前の一瞬一瞬と向き合っていくことが、大人になるために重要なことなのではないでしょうか。
疎ましい感情や経験も愛したい
2番の冒頭では『忘却のバッテリー』にちなみ、野球を思わせるフレーズが用いられています。
野球選手は一瞬のチャンスを見送らないように、瞬時に行動するために踵を浮かしたフォームでいることが多いでしょう。
人生でも「一回だけのチャンス」を見送ったら、もう同じチャンスは巡ってきません。
だからチャンスを見つけた時に、いつでもすぐ行動できるように備えておきたいものです。
とはいえそれは簡単ではなく、チャンスを見逃したり掴み損ねたりして後悔することばかりの人もいるはずです。
自分を「主人公の候補」くらいの特別な存在だと思っていたのに、チャンスを逃し続ける自分は重要でない「名前も無い役」のように思えてきます。
せめて主人公に並ぶ存在なら「スピンオフ」でスポットライトを浴びられるのに、それすら望みが薄いことにがっかりしているようです。
ここでは自分の心にある愛を「くだらない」と表現しながらも、その気持ちを表に出す時に「嘘つきにはなりたくない」と歌っています。
これは自分自身に対しても他人に対しても誠実でありたいという純粋な感情を表しているように思えますね。
胸が騒めく日はあえていつもと時間をずらし「急行電車」に乗って、自分自身も速いスピードで前に進むイメージを掴もうとしている様子が読み取れます。
この部分では心に押し寄せる疎ましい感情を吐露しています。
自分の存在に「価値なんか無い」と感じ、孤独を感じる夜に苦しんでいるようです。
本心ではないのに大切な人のことも「嫌い」だと思ってしまい、優しくなれない自分に自己嫌悪の気持ちが湧き出てきます。
「光」や「希望」というポジティブなものにも心を痛め、独りぼっちでいると世界から「僕だけ置いてけぼり」にされているようにも思えます。
複雑な感情が絡み合ってねじれている自分の心に対する不信感や迷いが見え、楽しい青春の裏にある暗い側面にきっと共感を覚えるでしょう。
そうした暗い感情を持っていても、その「不完全な思い」も大事にしたいという思いもあります。
そのための一歩として「不安だらけの日々でも愛してみる」ことに決めたようです。
「クソみたいな敗北感」というフレーズからは、打ちのめされるような経験をしたことが読み取れます。
しかし「どれもこれもが僕をつき動かしてる」と続き、全ての経験や感情を原動力にして行動しようとする青臭くて力強い気持ちが伝わってきます。
あの頃の青を覚えていようぜ
「鼓動が揺らすこの大地とハイタッチ」のフレーズは、様々な人が世界を動かしていて誰も無駄な存在なんていないことを示しているのかもしれません。
自分の全てを懸けて突き進んだ記憶は「色褪せはしない 忘れられないな」と充実感を得ている様子も垣間見えるでしょう。
しかし一方で、多くのものを失くしてしまうことにも再度言及しています。
絶対に忘れたくないと思える思い出も、いつか心の奥底にしまい込んで忘れてしまうことがあるでしょう。
それが分かっているので、あらゆる種類の傷を増やしながら大人になっていくことに不安を感じてしまうのも当然です。
人生の暗い側面を目の当たりにすると、絶望しかないように思えます。
ところが、ここでは「雨が降るその後に緑が育つ」と歌われています。
雨は心を憂鬱にさせることが多いですが、雨によって緑は青々と元気に成長していくものです。
これは人生についても同じで、苦悩や挫折を経験するからこそ人は大きく成長できます。
大切なのは「意味のない事はないと信じて」進むこと。
「答えが無いことばかり」の人生は、その人次第でどんな風にも答えを出せる愛すべきものだという想いが示されています。
ミセスの青春ソングといえば『青と夏』を思い浮かべる方も多いでしょう。
その歌詞の中では「今はさ 青に飛び込んで居よう」と、青春真っ只中の時間を純粋に楽しもうとする気持ちが歌われていました。
一方、『ライラック』では「あの頃の青を覚えていようぜ」と歌っています。
大人になった主人公が青春時代を回想し、その記憶をいつまでも大切にしたいという想いを抱いていることが読み取れます。
『青と夏』から6年が経ち、『ライラック』で伏線が回収されたような展開になっているところが秀逸ですね。
さらにその思い出を良いものとして掲げようとするのではなく、ただ「覚えていようぜ」と語りかけている点にも注目できます。
学生時代は良いことばかりではなく、思い悩んだり傷ついたりすることもあります。
それでも、そうした「苦味」のある過去もきっといつか糧になる時がくるはずです。
そのため、どのような思い出を持っている人の心にも寄り添える表現としてこのフレーズを選んだのだと考察できます。
今の自分自身を認め愛することで、過去の記憶は輝くでしょう。
だから自分で自分を「愛せてる」のかどうか、いつも自問するようにしたいですね。
「ライラック」で青春を感じよう!
Mrs. GREEN APPLEの『ライラック』のMVは、複雑な感情を抱えながら日々を送る学生たちと彼らを見つめる周囲の大人たちの構図で青春の姿を映し出しています。
同じように、歌詞もどちらの立場で見ても自分のこととして捉えられる魅力的なフレーズが詰まっています。
学生も大人も暗い感情が押し寄せそうになる時は、ぜひ『ライラック』を聴きながら今日を頑張る力をもらってくださいね。