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森本慎太郎主演『街並み照らすヤツら』は間違いない作品に 前田弘二×高田亮が生むリズム

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『街並み照らすヤツら』©日本テレビ

 前田弘二の演出と高田亮の脚本という現代の日本映画界において最も信頼のおけるコンビのテレビドラマが始まるとなれば、それはもう注目せずにはいられない。共同脚本には12年前の『太陽は待ってくれない』でも前田と高田と組んだ清水匡が加わり、主演にはSixTONESの森本慎太郎、その妻役には森川葵と、このキャスト2人は予想外の傑作だった『ナンバMG5』(フジテレビ系)の組み合わせ。さらに『婚前特急』の浜野謙太がいて、前田作品に欠かせない宇野祥平もいる。それだけで『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)は最後まで完走するに値する作品であると直感できる。

参考:森本慎太郎の“よくしゃべる”演技が再び? 『街並み照らすヤツら』はクセ強会話劇に期待

 4月27日に放送された第1話は、森本演じる主人公の竹野正義が息を切らしながら誰かを抱えて走るショットと、その背後でビルが燃えている光景から幕を開ける。そのまま2カ月前へと遡り物語が本格的にスタートするわけで、これはいうまでもなく、ここから描かれていく正義の行動がその不穏なオープニングシーンへと繋がるのだと示されている。ところが最初のケーキ屋のシーンで繰り広げられる正義と妻の彩のやり取りからは到底そのようなサスペンスフルな空気は想定できない。

 閑古鳥が鳴いている洋菓子店の「恋の実」で、黙々とケーキ作りをしている正義に、生活のためにバイトを始めると言いだす彩。彩の言葉に対してワンテンポずれているような、妙に噛み合っていない正義の返しと、噛み合っていないにもかかわらずそれにしっかりと喰らいついていく彩の対応。この序盤の2人のやり取りは、『まともじゃないのは君も一緒』における成田凌演じる大野と清原果耶演じる香住の止めどない言葉の応酬を思い起こさせる。もっとも、これが98分の映画だったらこのようなやり取りだけで進めていくこともできるだろうが、連続ドラマである以上、物語はもっと様々な方向へ膨らませていく必要が出てくる。

 そこで与えられるのは、「恋の実」がある商店街自体がほとんどの店が閉じてしまったシャッター街であるという基本となる設定に、体温が上がると尻を掻くという癖を持つ正義の幼なじみの荒木(浜野謙太)や、保守的で限りなく昭和っぽさの強い商店会の会長・大村(船越英一郎)の登場。さらに商店街で店をやっている面々が会長に言われるがままに損害保険に入っているという要素が、単に大村が嫌なヤツであることを示すのではなく、“偽装強盗”というとんでもないアイデアへと発展していく(それを思いつくまでの、尻を掻く荒木→目眩を起こす正義→入院して謎の男と遭遇するのテンポ感の良さは、このアイデアの突拍子もなさを体現している)。

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 もちろんぎこちなさすぎる偽装強盗の果てに、それを手伝ってくれた荒木の店の常連の青年たち(萩原護と曽田陵介)の危なっかしさと、捜査にあたる警察(宇野祥平と吉川愛)のこれまた噛み合わないコンビの登場が加わることで、どの人物関係においてもちょっとずれた波長が混在し、前田×高田作品では馴染み深い不思議なリズムが生まれていく。そして最後の最後に酒屋の娘・莉奈(月島琉衣)が登場したことで、一気に正義が取り返しのつかない道へと歩んでいくだろうというサスペンスフルな空気も見え隠れする。このリズムを保ったまま、どのように最後まで走り抜くのかは注目が尽きない。
(文=久保田和馬)

 
   

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