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『怪獣8号』は“世界的な”アニメ作品に まるで『攻殻機動隊』草薙素子のようだったミナ

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 Production I.Gもアニメーション制作の上で、その強みを発揮していくことになるだろう。第2話で怪獣化したカフカが余獣を殴り飛ばしたシーンは、漫画よりも溜めを作り、カフカの怪獣としての強さを際立たせた。血の雨が降る中に立つカフカを下から上にティルトして映し、続けて足下からカフカを映すところは、母親共々命を助けられた少女の目線に近い。少女がカフカに感じたカッコよさや覚えた賞賛の気持ちが、アニメの視聴者にも共有されただろう。

 TVアニメでは、西尾鉄也によるキャラクターデザインも持ち味になっている。松本直也の絵がベースにありながら、やや面長になったり目が大きくて端が尖ったりした顔立ちになって、どことなく『NARUTO-ナルト-』感を漂わせている。西尾がキャラクターデザインを手がけたアニメ版の『NARUTO -ナルト-』は世界中にファンがいて、強い印象を残している。そうした印象に引っかかるところがある『怪獣8号』は、世界でもきっと話題になるだろう。

 第2話の段階で、漫画の2話と3話をいっきに描いて、四ノ宮キコルの登場まで進めたところには、キコルが準主役級の存在であることを、アニメで初めて『怪獣8号』に触れる人にも早いうちに知ってもらおうといった意識が感じられる。第1話も第2話もアニメのページ数で共に60ページほどとバランスは悪くないが、展開としてはカフカの覚醒という見せ場の後に、キコルとの驚きの出会いがあって印象が分散される。これは、『怪獣8号』という作品をある種の群像劇として描いていく意識があったからなのかもしれない。

 『怪獣8号』の漫画が登場した時、アラサーのカフカが夢に再挑戦するストーリーといった受け止められ方がされ、同じような境遇の人たちを喜ばせた。連載が進む中でそれが変わり、キコルや保科宗四郎といった登場人物たちがそれぞれに重荷を背負いながら、怪獣と対峙していく物語になった。キコルの存在を早々に際立たせておくことで、カフカだけの物語ではないと知ってもらい、広い層の関心を集めようとしたのかもしれない。

 TVアニメは、第3話以降でカフカや市川レノが防衛隊の入隊試験に挑むことになり、ストーリーに大きく絡む難敵との邂逅もある。さらにカフカとキコルの関係が深まるにつれ激しいバトルも繰り広げられていく。そして3番隊副隊長の保科宗四郎も本格的に登場してくる。漫画のままならその中でミナの印象がやや後退気味になるが、TVアニメではカフカとの幼少期のやりとりが多めに描かれ、現在のミナの心情をうかがわせる描写もあって正ヒロインの座を維持させようとしている。

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 ミナは防衛隊の序列では雲の上の存在で、カフカが本筋で絡むのはキコルであり相棒的な意味合いではレノが傍らの位置を奪い合う。そこにどれだけミナが絡んでくるかによって、ミナのファンになった視聴者を離さないまま進んでいけるかが決まってくる。声を演じる瀬戸麻沙美のファンも含めて、アニメの制作陣はミナに対してどのような差配を見せるのか。
(文=タニグチリウイチ)

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