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編集未経験で『神血の救世主』がいきなり大ヒット ナンバーナイン・遠藤寛之氏に聞く、webtoonの編集術

Real Sound

――サブキャラも魅力的だとストーリーに厚みが出ますし、それぞれのキャラのファンも増えて感情移入もしやすくなります。

遠藤:僕は、キャラ、ドラマ、サービスの3つがしっかり入っているかどうかが、マンガには重要だと思っています。webtoonの人気作は、読者サービスをすごく意識している作品も多いですが、それだけでは仮に20~30話くらいまで人気があったとしても、50話以上連載した場合に人気を維持するのがむずかしくなってくると思いました。主人公の行動理念や物語の軸なども江藤さんと検証し、物語を広げていきました。

――人気があると、手ごたえが感じられたのはいつでしょうか。

遠藤:去年の7月頃ですかね。SNSでエゴサをしていると、『神血』のことをつぶやいて下さる方が増えてきている実感があり、ファンアカウントを作って下さる方が出てきたり、ファンアートの数も増えてきたんです。そのあたりから、江藤さんと「俺たちのマンガ、人気が出てきたかも」と話すようになりました。

――たくさんの人に読んでもらうために、広告も工夫されたそうですね。

広告の後にも続きます

遠藤:Twitter(現X)に、1話をまるまる無料公開する広告を打ったところ目に見えて効果が高く、月間の売上が前月の4倍くらいまで一気に跳ね上がったんです。それまで10ヶ月くらいほぼ横ばいだったので、このままだったらどうしようと思っていた矢先で、本当に驚きました。その後「LINEマンガ」さんが全話無料公開を提案して下さり、翌月はさらに倍の売上を達成することが出来ました。今までの俺たちは一体何をやってきたんだろうと思うほど、効果が大きかったです。

■実は編集の手法も王道

――編集者の立場から見た、『神血』の面白さはどこにありますか。

遠藤:マーケットインで流行りの要素を取り入れてもいますが、やはり物語が面白いし、キャラが魅力的であることだと思います。マンガはどれだけマーケットインで作っても、作品自体が魅力的でないと絶対に売れないと思います。

――遠藤さんと江藤先生の信頼関係もヒットの要因ではないでしょうか。

遠藤:読んでもらえたらきっと魅力的なマンガと思ってもらえるはず、という気持ちは共有しながら作ってきたと思います。江藤さんの作品に懸ける情熱に応えるために、僕が出来ることとして、名刺代わりに、会う方会う方に『神血』の作品紹介カードを渡すようにしています。とにかく一人でも多くの方に読んでもらいたいと言う一心ですね。あと、僕個人のXアカウントは、実質作品の宣伝アカウントのようになっています。そういう飢餓感は他の人に負けないと思っています。

――素晴らしいですね。

遠藤:あと、作品の質は絶対に落とさない、毎回全力でやるという目標は掲げています。こんなに描いたら次のネタがなくなるんじゃない、と心配されてもおかしくないくらい、読み味を薄めないように努力してきました。他のマンガと比較しても1.5倍くらいのスピード感を意識しています。

――遠藤さんは、ネームの修正指示などはどのように出すのでしょうか。

遠藤:江藤さんは、「気になることは些細なことでも言ってほしい」と言って下さるので、その通りに直すかどうかは別としても、文字数とか、口角の上がり方とか、顔に汗を入れるのかとか、ギャグの言い回しまで、かなり細かく話します。こういった打ち合わせの中で、江藤さんとの信頼関係を築けてきたのかなと思っています。

■国産webtoonへの思い

――遠藤さんは、webtoonの未来をどのように考えていますか。

遠藤:webtoonには大きな可能性を感じています。マンガの市場として、横読みとは異なる新しいステージができたと思っています。当社が今から横読みのマンガを作って、大手出版社と並び立つのは相当ハードルが高いと思いますが、新しい市場なら同じスタートラインで勝負が出来るのではないかと考えました。現在、韓国の作品がwebtoon市場では人気ですが、今まで、国産で肩を並べる作品がなかなかありませんでした。もしかすると、自分たちがそういった作品を創れるかもしれない、と思えるような魅力が今のwebtoon市場にはあります。

――江藤先生もおっしゃっていましたが、webtoonは表現の仕方も進化の途中で、新たな表現が生まれていく可能性を持っています。

遠藤:横と縦では視線誘導にかなり違いがあります。江藤さんとは、画面を10分割した時にどれくらいの間をあければテンポよく読めるのかとか、webtoon特有のリズム感は常に研究しています。webtoonの読者の方は画面の中央を見ながらスクロールするので、画面の端には重要な情報が寄らないようにしようだったり、吹き出しを上下に配置するのに対して、吹き出しを左右に配置すると読むスピードが遅くなるので、演出に合わせて使い分けましょうなど。毎日のように試行錯誤しています。

――『神血』も盛り上がっていますし、他にも担当されている作品も多いと思いますが、遠藤さんは今後どんなマンガを作っていきたいと考えていますか。

遠藤:編集者はプロフェッショナルとして、安定して結果を出していく必要があると思うんです。そのためには、自分の感情で「面白い」とか「好き」とは言わないようにして、あくまでもターゲットとなる読者のことを考えた作品作りを心掛けていきたいなと思っています。より市場に受け入れられるような作品作りをするためには、読者の方のコメントも参考にして日々研究を欠かさないようにしています。そして、『神血』にはもっと売れて欲しいし、何よりもっと広がってほしいです。このインタビューで『神血』を知って下さった方にもぜひ読んでいただきたいですし、みんなにおすすめしてくれたらもっと嬉しいです。

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