「聞き取り困難症(LiD)」や「聴覚情報処理障害(APD)」という言葉に聞き覚えがあるだろうか。聴力は正常だが、言葉の聞き取りや意味の理解に困難が生じる症状をさす言葉である。SNS漫画『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』は、それを抱える主人公と友人たちとの様子を描いて16万いいねを集めた。
(参考:『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』を読む)
作者は雨桜あまおうさん(@amaousansan)。この世界観はどのように着想され、大きなバズを生んだ理由をどう思うかなど、彼女へのインタビューを通して本作の秘密に迫っていきたい。(小池直也)
――バズを起こした理由をどう分析されていますか?
雨桜あまおう(以下、雨桜):想像した以上に反響をいただき驚きました。聞き取りの良し悪しは「ゼロか百か」で分けられるものではなく、「良好な人から、普通の人、ちょっと困っている人から、非常に困難のある人」まで、グラデーションになっているのでしょう。
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あくまで私見ではありますが、そのように感じています。そういうものだからこそ、広く、多くの方々から共感を得たのだろうと考えております。
――「聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)」をテーマにしたのはなぜでしょう?
雨桜:私自身もどちらかというと、聞き取る力が高くない人間でして。これまでも日常や仕事などの色々な場面で失敗をしてきました……(笑)。
そんな下地があるなか、先日たまたま出先で声優さんのクリアなナレーションを聞いたことで、「描くか」という気持ちがフッと湧いてきて。それが制作のきっかけです。
――聞こえない言葉をフォントで表現した点も印象的です。
雨桜:主人公キャラクターの聞き取りづらさをフォントで再現することで、読者も追体験できるような仕組みにしたかったんです。