人は保有している株に利益がのってくると、大きく育つのを待つよりも早く売って、その含み益を確定してしまいたいという思いに駆られます。ですが、それはその後の大きな成長のチャンスを逃す判断となってしまいます。本記事では『決算書3分速読から見つける10倍株ときどき50倍株 2年で資産を17.5倍に増やした元証券マンの投資術』(KADOKAWA)から、著者の〈かぶカブキ氏〉が、株価が何倍にも成長するのを待つための方法と、株価が大きく育つ銘柄を見つけるコツを解説します。
成功を疑似体験し、握力を鍛えよ
人は保有株に利が乗ると、その利益が大きく育つのを待つのは難しく、早く売ってその含み益を確定してしまいたいという思いに駆られます。
その一番の理由は、もともと人間の脳がそういうしくみになっているからなのですが、握っていれば利益が育つということを頭ではわかっていても、腹落ちできていないことも影響していると思っています。
株価は日々のさまざまな材料でランダムに動いていると思っていると、自分がほれ込んだ銘柄の値動きを信じることができません。握力が持たずに少し利が乗ると利益確定してしまうのは、これだと思った銘柄の株価が大きく成長していく経験をしたことがないことも影響しているのではないでしょうか。
「業績が株価を形成する」という株価の根本的な根拠が、腹落ちできていないのです。ですから、銘柄を握り続ける握力が足りない人は、過去に2倍3倍になった銘柄や10倍になったテンバガー銘柄など、短期的に株価が大きく上昇した実際のケースを知る必要があります。それは単に右肩上がりの株価チャートを見て、すごいなあと思うだけでは足りません。
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上昇の初動から最高値を付けるまでの間、その銘柄にどんな環境変化があったか、どんなニュースがあったか、どんな決算が出たのかを調べて、そのときに株価はどんな反応をして、PERは何倍ぐらいになったか、そしてどんな動きをしながら上昇していったのかを、一つひとつ調べながら疑似体験していくのです。
「PERが〇倍のとき、時価総額は〇円ぐらいで、このときに〇%程度の成長率の数字が出て、ストップ高をつけたんだ」
「この決算では〇%も増益していたのに、なぜか株価は低迷し、その後、また高値を超えていっているな。謎に下がるケースもあるんだな」
などというふうに、決算の数字に対してその都度株価がどんな反応を示したのか、その後どのように動いていったかということを疑似体験することで、業績が順調に伸びていても予期せぬ下落に見舞われることが多々あることもよくわかります。
そして、山あり谷ありな値動きがあっても業績が伸びていれば、いずれ株価は上昇するということを心の底から理解して、腹落ちすることができると思います。
持ち株が時間をかけて大きく育った経験を持たない人が、この作業をすっ飛ばして、株価が2倍、3倍、そして10倍に伸びていくのを握力強く待ち続けることは難しいはずです。大きな利益を上げるだけの握力は、成功体験によって培われます。こうした成功体験を持たない人は、このプロセスを経て自分で握力を鍛える必要があります。