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「同僚に作業を中断される」「ヘッドフォンをすれば冷たくて非協力的と思われる?」… 実は集中しづらいオープンオフィスという問題【静かな働き方】

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新型コロナウイルスによるパンデミックで、オフィスの形態にも変化が起こりました。本稿では、有名デザインコンサル会社IDEOの元デザインリードであるシモーヌ・ストルゾフ氏による著書『静かな働き方』(日経BP 日本経済新聞出版)の第7章「さらば、おいしい残業特典」から、さまざまなオフィスの例を見ながら、リモートワークやオープンオフィスについて、考えてみましょう。

在宅勤務で増えた会議の回数と労働時間

新型コロナウイルスによるパンデミックはセグメンターにもインテグレーターにも、困難な状況をもたらした。仕事と私生活の空間的、時間的な隔たりがなくなった知識労働者は自分自身でその線引きをすることを余儀なくされたのである。300万人以上の労働者を対象とした全米経済研究所の調査は、在宅勤務により会議の回数は13%増加し、1日の労働時間は8%増加したことを示している。これは労働時間が1人あたり平均で48分以上増えたことを意味する。

「こうした労働時間の増加は、仕事と私生活の隔たりが曖昧になった結果と考えられる。自宅とオフィスが一緒になったことで仕事を切り上げるのが難しくなった」と研究者たちは書いている。失業率が記録的な水準に達した期間中も仕事を続けられた多くの人は在宅勤務をすることとなった。だが、それは自宅で仕事をする生活ではなく、オフィスで寝起きするような生活だった。これは自宅で子育てしながら働いていた人は特に感じていたことだ。ビバリー・ソテロもそのひとりである。

ビバリーはカリフォルニア州オークランドの小学校で教師として働いている。パンデミックの間も35平米のワンルームで1年生の授業を受け持っていた。その背後で5歳の娘のシーサは幼稚園のリモート授業に参加した。「親をフルタイムでできませんでした。まず先生をしなければならなかったのですから」とビバリーは話す。パンデミックはシングルマザーである彼女を含む多くの親に仕事と育児の両方を同時にこなすことを強要した。


ワンルームの一角に娘用のスペースをつくった。娘を座らせ、その前にノートパソコンを立てた椅子を置く。ビバリー自身は部屋の反対側でヘッドフォンをつけて授業をした。1、2時間おきに、ビバリーは1年生の生徒たちに少しの間、お絵描きをするように指示してカメラをオフにし、娘の様子を見た。ある時からアパートの真ん中にテントを設営して自分だけの小さな空間を持てるようにしたとビバリーは言う。「もう、地獄でした」と彼女は言う。「ほかにふさわしい言葉がみつかりません」

オープンオフィスは集中しづらい

とはいえ、パンデミックが発生する前から多くのオフィスは、5歳の子どもがいるワンルームと同じくらい気が散る環境だった。シリコンバレー以外でも一般的になっているオープンオフィス(パーティションを設けず、ひとつの空間にデスクが並ぶオフィス)は、開放的なコミュニケーションを促進し、作業の効率を向上させると言われている。サバルが『四角い間仕切り』で説明するように、「部署や社内の等級が異なる2人の社員が偶然出会い、突発的な話し合いによる摩擦によって燃え上がるようなイノベーションが起きる」というのだ。

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経営陣はこうした「給湯室マジック」をアピールするのが好きだが、同じ空間で働くことが創造性や協力のために必要不可欠であることと示す証拠はない。むしろ、オープンオフィスでは生産性と対面でのコミュニケーションは減少することを示す研究もある。

オープンオフィスで働く社員はより長い時間働くプレッシャーを感じ、エンゲージメントが低下するのだ。「オープンオフィスはコスト削減の方法としても、オフィス内の全員が特定の瞬間に他の人たちが何をしているかを監視する方法としても機能する」とアン・ヘレン・ピーターソンは説明している。「かつて標準だったプライベートなオフィスとは異なり、ほとんどの人はオープンオフィスでは仕事に集中しづらいと感じている。同僚に作業を中断されることが多いし、ヘッドフォンをすれば周りからは冷たく非協力的だと思われてしまうのです」

 
   

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