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「光る君へ」道兼の“汚れ役”の意味が変わった理由 玉置玲央、ヴィランに当初不安も「これをやるのか」

シネマトゥデイ

第16回「華の影」より玉置玲央演じる藤原道兼 – (C)NHK

 吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で平安貴族社会の最高権力者となる藤原道長(柄本佑)の次兄・道兼を演じる玉置玲央。初回は、道兼が吉高演じる主人公まひろ(紫式部)の母を殺害するショッキングな幕開けとなり、道兼は一躍ヴィランとして注目を浴びることとなったが、21日放送・第16回ではその道兼に大きな変化の兆しが見られた。玉置があらためて、同役への予想を超える反響や放送前のプレッシャー、そして道兼の変化に対する解釈などを語った。

 本作は、平安中期の貴族社会を舞台に、のちに1,000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ)の生涯を、大河ドラマ「功名が辻」(2006)や、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2010)などの大石静のオリジナル脚本で描くストーリー。物語は、「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルと有力視されている道長と運命の絆で結ばれたまひろとの関係を軸に展開するが、道兼は惹かれ合う二人の決定的な障害ともなる人物。初回のラストで道兼がまひろの母ちやは(国仲涼子)を刺殺。SNSでは「酷すぎる」「理不尽!」「初回から地獄」と騒然となった。

 劇団柿喰う客に所属し舞台経験豊富な玉置。亡き大杉漣と共演したスクリーンデビュー作『教誨師(きょうかいし)』(2018)では大量殺人を犯した死刑囚役で第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。大河ドラマへの出演は「真田丸」(2016※織田信忠役)、「麒麟がくる」(2020※伊平次役)に続き3度目となる。初回の残酷な展開によって道兼は視聴者にヒールとして認識されることとなったが、当初、玉置は視聴者が離れてしまうのではないかと危惧していたという。

 「僕、結構クズの役が多いんですよ。なので自分で言うのもなんですけど、お手の物なんです(笑)。大石先生から“玉置さんに今回ピッタリの役があるのよ”といただいた役なので、“よしやるぞ!”と燃えたんですけど、ふたを開けてみたら“おいおいなかなかじゃないか”という展開で……。これをやるのかと(笑)。初回の展開は、正直“おもろいじゃないか”と思ったし、プレッシャーに感じることはなかったんですけど、“こういう話が続くようだったら今回の大河ドラマは見なくていいや”と思われてしまったらどうしよう、視聴者が離れてしまったら……という不安はありました」

 返り血を浴びた道兼の顔を見て自分でも「“怖っ”て思った」という玉置。初回放送後の反響について「良くも悪くもこんなにいろんな反響があると思っていなかった」と言い、「心強かったのが共演者、スタッフの皆さんがものすごく肯定してくださったこと。このままヘイト役、ヒール、ヴィランをきちんと全うしようと思えました。だから14回で父上(兼家)に『とっとと死ね!』と暴言を吐くシーンも、気負わず“親父に暴言を吐ける。ヤッター!”って思いながら演じた節はあります(笑)」と不安が消えていった過程を振り返る。

第14回より父・兼家にブチ切れる道兼

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 ヴィランからスタートした道兼だが、父・兼家(段田安則)にちやは殺害を知られてからは、父の野心のため“汚れ役”を一手に引き受けることに。兼家は嫡男・道隆(井浦新)や三男の道長ばかりをかわいがり、父の愛を得ようと尽くす道兼の悲哀が色濃くなり、視聴者の声もヘイトから同情へと変わっていった。その道兼が第14回で後継者に嫡男の道隆を指名した兼家に「父上は正気を失っておられる。父上の今日あるは私の働きがあってこそ」「この老いぼれが、とっとと死ね!」と怒りを爆発させた。玉置は、これが道兼にとって1つのターニングポイントだったと指摘する。

 「道兼は父のため、出世のためと罪を犯しながら働いてきた中で、ずっと自我を押し殺してきたと思うんです。そんな彼が、最も信奉していた父に対してあの言葉を吐けたというのは彼の人生においてすごく意味のあることだったのではないか。あの時点から、徐々に自分に嘘をつかないようになっている気がしていて。父親に暴言を吐いたこと、そして道長に救ってもらったことが、彼の中ではものすごく大きなターニングポイントになっているような気がします」

 これまで疎んでいた道長に救われる展開となったのが、14日放送の第15回「おごれる者たち」。父の死後、喪に服さず妻にも三下り半を突き付けられ自暴自棄になった道兼を、道長は「まだこれからではありませぬか。兄上は変われます。変わって生き抜いてください。この道長がお支え致します」と励ます。玉置は本シーンを以下のように振り返る。

 「僕は、このドラマでは父に一番愛されていたのは道長だと思っていて。父の遺体を発見したのが道長だったことで確信しましたが、台本上でも本編を見た上でも父の道長への愛をひしひしと感じるので、道兼は道長のことが大嫌いだったと思うんですよね。そして、道兼が一番信奉していて、自分の中で柱になっていた父が亡くなったことで、彼の中で何かがぽきっと折れて崩れてしまう。そんな時に救ってくれたのが、自分がさんざんひどい仕打ちをしてきた道長だった。ベロベロになっているところに“お迎えに来ました”って面倒を見に来てくれて、“兄上は変われます!”と寄り添ってくれた。避けず逃げず、今道兼に必要な言葉をぶつけるって、すごくエネルギーのいること。なおかつ道長の中でも乗り越えなきゃいけないことがたくさんあるやり取りだったと思うんですよね。あの時、道兼の中で道長に対しての感情がガラッと変わったんです。同時に、(柄本)佑くんに元々あった信頼や共演者として感じていたいろんなことがもう一つ先のステージに行ったような気がします」

 この一件は確かに道兼に大きな変化をもたらし、21日放送「華の影」では疫病が蔓延するなか、道兼が危険を顧みず救護施設である悲田院へと向かう。当初、道長が向かおうとしていたが、道兼は「汚れ仕事は自分の役目」だと言い、制する。玉置は、ここでの“汚れ仕事”はこれまでと大きく意味合いが変わっていると指摘する。

 「人間そんなに性根は変わらないかもしれませんけど、でも道長との一件以降、彼の中でやっぱり変化があって、汚れ役というのが今までの言葉通りの意味とは違っている。これは想像でしかないですけど、もしかしたらこの先の道長の未来のために汚れ役を担うという意味合いもあったのかも。要は自分の出世とか欲のためではなく、誰かのために汚れ役を“ちゃんと”担っていくようになっていった。ともかく道長のおかげで、道兼は少しだけ真人間になれたということだと思います」

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