あるトラウマから異常に乱暴な性格になった9歳の少女ベニー。母は娘との接し方がわからず施設に押し付けるが、本人は母の元に帰りたがっていた。
そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは隔離療法をベニーに施すことを提案する
題名の『システム・クラッシャー』というのは「行く先々で問題を起こす、制御不能で攻撃的な子供」を指す隠語だという。本作の主人公ベニーはまさにそのような子供である。
彼女には彼女なりの理由がいろいろある。それはトラウマ的な記憶だったり、制御不能な暴力行為を誘発する「トリガー」だったりするわけだが、まだ9歳の彼女を最も苛んでいるのは自分の立場や居場所について、自分自身に何の決定権もないことがもたらす圧倒的な無力感のうちにある。
「社会」はその成員に対して暴力的なまでに「順応すること」を要求し、それができない者は「アウトサイダー」として社会から隔離されることになってしまうのが常だ。しかし9歳の子供を「隔離しなければならない」と考える「社会」とは一体何なのだろうか?
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もちろん、この抑圧はベニーひとりに向けられているわけではなく、周囲の(特に善意の)大人もその抑圧と無縁ではいられない。
「システム」=「社会」と「個人」の関係はどこまでも不均衡だ。人間はどこまでも「システムの都合」を内面化しなくてはいけないのだろうか?
ベニーを演じるヘレナ・ツェンゲルの演技も文字通り圧倒的で、胸に突き刺さる。
STORY:あるトラウマから異常に乱暴な性格になった9歳の少女ベニー。母は娘との接し方がわからず施設に押し付けるが、本人は母の元に帰りたがっていた。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは隔離療法をベニーに施すことを提案する。
監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
出演:ヘレナ・ツェンゲル、アルブレヒト・シュッフ、リザ・ハーグマイスターほか
上映時間:125分
4月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開予定