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【#佐藤優のシン世界地図探索54】中国公務員試験の倍率高騰は、日本の私大生にチャンスを与える!?

週プレNEWS

――なぜですか?

佐藤 今、東大生の「官僚離れ」が叫ばれ、彼らは投資銀行やコンサル会社に進んだり起業なんてしています。だから、その隙に中央省府に入ってしまえばいいんです。

――東大が官僚を目指してないこの隙に、私大生は官僚を目指す一大チャンスなんですね。

佐藤 そういうことです。だから、中国の今の現象は明日の日本だと思えばいいわけです。『北京女子図鑑』では投資銀行や起業に向いていた中国の若者たちが、「やっぱり公務員!」となりました。公務員が持っているのは権力で、権力は金に代わる、と気づいたんです。

――なるほど!!

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佐藤 なので、私大生や地方の国公立大学生にとってはチャンスです。東大生だから官僚として成功したわけではなく、官僚の教育システムが優れているから成功してるんですよ。私だって、外務省が3000万円くらいかけて研修してくれたから、ロシア語が出来るようになりました。

私も同志社大の神学部を卒業して普通に就職していたなら、今頃はキリスト教の大学教員か、教会の牧師になっていたと思います。外交官と較べれば生涯所得は数分の一だったと思います。もちろん、それはそれで充実した人生を送ることができたと思います。

――すると、私大生でも官僚になったら、数千万円かけた優れた教育システムを受けられて、優秀な官僚になれてしまう可能性がある。中国の就職難による悲鳴は、日本にとっては東大以外の大学生には歓声なんですね。

佐藤 そうです。悲鳴ではありません。中国人はやっぱり公務員だと目覚めたんです。

――中国の方が日本より先行しているんですね。

佐藤 そういうことです。数年前の『北京女子図鑑』と『東京女子図鑑』の違いは、自分が上昇するための離婚や、あるいは住みたい街に住むための結婚にまで、中国では踏み込める人が少なからずいるということです。

――確かに、北京と東京では生き方の基本が違います。

佐藤 だいたい、家でマージャンやっている旦那とその友達を、警察に通報する日本の妻はいますか?

――通報しません。

佐藤 離婚を前提に女主人公が新居の名義を自分にするとか、日本とレベルが違いますよね?

――確実に違います。これは前々回の連載で触れた「家産国家」に繋がってきますね。

佐藤 そうです。要するに、国家幹部の家来になれば、エリートの家産システムに入るんですよ。

――労奴ではなく、家来になれと。

佐藤 家産システムは外にいるより、中にいた方がずっと安定していますからね。

――どんなに無理をしても、そこに入れればあとは楽、ということですね。

佐藤 その通りです。それから、起業なんて誰でもできるものではありません。

――起業するのは誰でも自由だけど、それを持続できるか?ですよね。

佐藤 先の連載で話題にした『東京男子図鑑』にそのセリフはありましたよね。起業に成功した同級生が、あとから起業した主人公に『会社は作るよりもそれを維持する、その先で地獄から見るから』と。

――だったら、すんなり家来(公務員)になっていた方が楽ですね。

佐藤 楽というか、安定していて生涯給与所得が結局はいいと思います。また、権力を背景にした仕事には、それなりの面白さがあります。さらに、公務員にはタワマンに住むとか、はったりが必要ありません。

――確かに。『東京女子図鑑』をテーマにした【#佐藤優のシン世界地図探索46】では、「現実にもいる港区の人々は貴族に近い」という話でした。今、港区のタワマンの上層階に住んでいるのは、ほとんどが中国から来た富裕層なんですよね。

佐藤 そうです。

――中国人がどんどん、港区貴族の多数を占めるようになっていく……。

佐藤 中国のあの競争の感覚からしたら、日本は緩いですからね。もっとも、代々富裕層の日本人は残ります。

――北京大に比べたら、東大は入りやすいって本当ですか?

佐藤 はい、本当です。競争率や選抜システムが全然違います。そもそも、中国には科挙システムがありました。

――今は、大学統一入試「高考(ガオカオ)」になっていますからね。ということは、来日して港区貴族になった大量の中国子女が、どんどん東大を受験して、簡単に合格する。

佐藤 そうなりますね。

――ならば、東大生たちが「やはり官僚だ」と気づく前に、私立大生と地方国公立大学生は日本の官僚試験をパスし、数千万円を掛けた官僚教育で”学び直し”て家産国家のバキバキの家来(官僚)になる。そうすれば、つらい就活を経て、さらにつらい労奴にならなくて済む。これですね。

佐藤 その通りです。

次回へ続く。次回の配信は2024年4月26日(金)予定です。

取材・文/小峯隆生

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